拍手お礼小説

□ほのぼの
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市中見回りに書類仕事、日々の鍛練と休む暇もない真選組副長という仕事。
そんな副長の手助けを少しでもしてあげたいと思って、俺は絶賛残業中の副長室へ出向いた。

「悪いな、そこにある書類をまとめておいてくれるか?」

監察方の俺が見ていい書類は本当にごく僅かしかない。
副長の机には俺の何倍もの紙の山ができていた。
小一時間経ったころにようやくまとめ終わることができた。

「できましたよ・・・って、もしかして寝てます?」

副長は机に覆いかぶさるように寝ていて、規則正しい寝息とともに身体が上下に動いていた。
頬には寝落ちたときについたのか、ちょこんと墨が付いている。
俺は副長の手から筆を取ると、硯の上に置いた。

(きれいなお顔が汚れたままじゃ、ね?)

副長を起こさないようにそっと頬をぬぐう。
完全に乾ききっていなかったそれは簡単に俺の指へと移った。
きちんと取れたか確認していると、どうしてもその形のいい唇へと目がいってしまう。

(だってここのところしてないんだもん)

お互い忙しくてちょっと触れ合う暇もなかった。
だけどしたいと言って副長の迷惑にはなりたくなかった。

(少しだけ・・・ほんの少し触れるだけだから)

無意識のうちにごくりと息を飲む。
そしてそっと、そーっと顔を近付けていく。
だけどあと1cmもない距離のところで俺は動けなくなってしまった。
副長の寝息が俺の鼻のあたりをくすぐる。

(〜っ、やっぱりできない!)

結局、キスすることはできなかった。
恥ずかしさと罪悪感に俺は勝つことができなかった。

「はぁ、頭冷やそ」

真っ赤になった顔にぱたぱた風を送りながら、俺は立ち上がった。
トイレにでも行って顔を洗いたい。

(10分だけ・・・10分だけ寝かしておいてあげます)

最後にしっかりと愛しい人の寝姿を目に焼き付けて部屋を出ていく。
もし早く仕事が片付いたら、頑張って甘えてみようと心に決めながら。

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