拍手お礼小説

□似たものラバーズ
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授業開始を告げるチャイムがなり、俺は一番後ろの席に目をやる。
俺の想像した通り、そこは空席だった。
休み時間までは教室にいたのに、いつの間に姿を消したのか。

(あいつ、またサボりやがって)

俺は高杉がいるであろう屋上を思い浮かべ、空を睨んだ。


屋上はポカポカの日差しで暖かく、昼寝をするにはちょうど良かった。
俺が授業をサボるのは内容がつまらないのと話を聞かなくても理解できるからだ。
それに一向にサボるのを止めない俺に懲りずに土方が怒ってくれるから。
むしろ怒って欲しいからサボっているのかもしれない。

(こんなこと思ってるって知られたら嫌われるか・・・?)

喉の奥でククッと笑うと、そっと目を閉じた。
土方が一生懸命俺を怒っているところが瞼の裏に浮かんだ。


授業を受けていても、その内容が頭の中に全然入っていかなかった。
それは頭の中が高杉のことでいっぱいだったからだ。
言い訳をするようだが、別に最初から高杉のことを考えていたわけではない。
ちょうど授業に飽きてきたころにふと頭をよぎってきたからだった。

(あいつは俺が出てこいと言うたびにどんなことを思っているのだろう)

高杉は俺が風紀委員だから説教してくると考えているのだろうか。
それも理由の一つではあるけれど、本心はそうではない。
ただ一緒に授業を受けたいからだ。

(そんなこと絶対あいつに言えないけどな)

今日はどうやって怒ってやろうか。
そんなことを考えると自然と顔がにやけてきた。
こう言っては御幣がありそうだが、なんだかんだ言って俺は高杉を怒ることが好きなのだ。


世話を焼きたい土方と世話を焼かれたい高杉。
似たような思いを抱く2人。
それは一番に自分のことを考えていてほしいという独占欲からなのかもしれない。

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