小説(銀魂・原作)

□神への願い
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新しい年を迎え、万事屋はいつもよりも騒がしかった。
ある1名を除いて。

「銀ちゃん、あけおめネ!初詣に行くアル」
「ったく面倒くせぇなぁ、お妙と新八と行けばいいだろ」
「駄目ですよ。銀さんも一緒に行って、今年も無事に過ごせるようにお願いしてきましょうよ」
「分かったよ。行けばいいんだろ行けば」

いつにも増してハイテンションの神楽に仕方なく付き合ってやる。
俺は完全に日曜日のお父さん状態になっていた。
覚悟を決めて、出かける準備を始める。
俺は寒さに弱いので、がっつり防寒していく必要があった。
マフラーを巻いていると、ふと頭に俺の想い人がよぎる。

(あいつ強がって薄着でいないかなぁ)


万事屋から一番近いお寺に行ってみると、そこは大勢の人であふれていた。
その中にはちらちらと黒い服が見えた。
俺はいるかなぁと思って、隊服を見つけるとついつい顔を確認してしまう。

「銀ちゃん、銀ちゃん!!お賽銭ちょーだいアル」
「ほらよ」
「5円なんて少なすぎネ。もっとたくさんじゃないと私の願いごとが叶わないアル」
「神楽ちゃん、5円は御縁があるようにっていう意味があるんだよ」
「つーか、おめぇの願いなんて腹いっぱい食うだとか、ろくなもんじゃねぇだろーよ。ほら俺たちの番だからさっさと拝め」

新八の説明に納得いかないのか少々むくれている神楽だったが、鈴を鳴らすのが面白かったようですぐ笑顔に戻っていた。

(今年もみんなと仲良く過ごせますように・・・それと十四郎ともっと一緒にいられますように)

誰かと一緒に新年を迎えることができて良かったと、俺はあらためて感じた。
感慨にふけっていると、神楽が着物の袖を引っ張ってきた。

「私おみくじ引きたいアル」
「ん、金やるから引いてこいよ」
「銀ちゃんは引かなくていいアルか?」
「いいよ、俺はそんなん信じてねーから」
「そんなこと言って銀さん実は凶を引きそうで恐いだけなんじゃないんですか?」

その言葉にどきりとしたが、さっさと金を渡し、神楽たちに引きに行かせる。
手に息をかけ神楽たちの帰りを待っていると、声をかけられた。

「あ、旦那ぁ〜。あけましておめでとうございます」
「お、ジミー君じゃん。おめでとう」

真選組の山崎がいたことで、十四郎がここにいる確率がぐんと上がる。
気になって俺の視線があちこちさまよう。

「山崎です!!初詣ですか?良いですね、俺ものんびり正月を過ごしたいですよ」
「良くねぇよ。寒いから早く家で暖まりたいよ」
「今年は寒いですもんね・・・そんなに探しても残念ながらここにはいませんよ」

言葉の後半は先ほどよりも小さい声で言われた。
少し意地悪くそう言われて、俺は焦ってしまった。

「っは、いや、べ、別にお宅の副長さんがどこにいてもい、いいけどねっ」

最後は完全に声が裏返り、山崎にクスクス笑わ
れてしまう。
しかも探している相手が誰だか自分から言ってしまった。

「分かりやすいですね、旦那は」

山崎は俺たちの関係を知る数少ない人物だ。
ただ山崎は俺たちがばらしたから知っているのではない。
監察という職業柄、人間観察が得意で俺たちの様子の変化で分かったのだ。
俺たちの関係を知っても別に俺たちのことを変な目で見ず、今まで通りに接してくれるので俺はとても嬉しく思っている。

「じゃあ、俺はそろそろ仕事に戻りますね。お互いいい年になるといいですね」

そう言って山崎は自分の持ち場へと帰っていった。
見送っていると、ちょうど神楽たちが帰ってきた。

「銀ちゃーん、私中吉だったネ!!」
「僕は小吉でした。銀さんは本当に引かなくていいんですか?」
「だからいいって。ほらこれで初詣はいいだろ。帰るぞ」

くるりときびすを返し、万事屋へと足を進める。
ちらりと後ろを向いて2人がちゃんとついてきているか確認することは忘れない。


頭を空に向けると、今年初めて上がった太陽がある。
ほんのり暖かい日差しに目を細める。
後ろを歩く2人の元気な声だけが俺の胸に響いた。
いつの間にか俺の大事なものは増えてしまったようだ。

(願わくば来年も誰かと新年を迎えられますように・・・)

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