小説(銀魂・原作)

□ほろ酔い
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自室での監察の仕事が終わり、やることもないのでもう寝ようかなと思っていた。
ふとんを出して敷き終わると、なぜか襖が開く音が聞こえた。
振り返ってみるとそこには副長が立っていた。

「どうかしたんですか、副長?俺に何か用ですか?」

よく見てみると副長は相当酔っているらしく顔が赤く、目が少々虚ろだった。
どこか外で飲んできたのか、着ていたのは隊服ではなく着流しで、すこし前がはだけ気味だった。

(あ〜〜、もうかわいいなぁ!!)

酒に酔っている副長はなんだかこどもっぽく見えて、俺の好みのどストライクだった。

「ん〜、なんで俺の部屋に山崎がいるんだ?」

酔いすぎて自分がどこにいるのかさえ分かっていないようだ。

「副長ここは俺の部屋ですよ。どこでそんなにたくさん飲んできたんですか〜?」

今にも倒れそうなほどふらふらしている副長を押さえ、聞いても無駄だと思いつつそう問いかける。
案の定副長は俺の質問には答えてくれなかった。

「俺ぁもうここで寝る。ふとん貸せ」

そう言うと、副長は酔いで力が入らないのか、俺に抱きつき全体重をかけてきた。
いくら真選組で鍛えていると言っても、大の大人の体重を支えきるのは大変だ。
ましてや抱きつかれるとは思ってもみなかったので、完全に油断していた俺はふとんの上に押し倒されてしまった。

「自分の部屋で寝て下さいよ〜!ふとん1組しかないんですから!!」
「じゃあ、一緒に寝よ・・・退」

退。
副長が俺のことを名前で呼ぶとき、俺たちの関係は上司と部下ではなく恋人となる。
少し前、俺がダメもとで告ってみたら、意外にも副長はあっさりOKしてくれた。
前から副長も俺のことが気になっていたらしく、俺にいろいろとばっちりがくるのは「好きな子はいじめたい精神」からだったそうだ。
恋人になったとはいえ、普段はばれないように以前と変わらない態度で接していた。


今俺の目の前には、目を閉じてキスをせがむ副長がいる。
すぐにでもキスしてあげたいところだが、ここでキスをしたら理性が飛びそうだったので、我慢することにした。
俺は酔っている恋人を襲えるほど鬼畜ではない。
それにいつも酔った副長は次の日になると記憶がさっぱり抜けていて、俺がむりやり犯ったと勝手に結論付けて怒ってしまうのだった。
そうすると1週間話してくれなくなったり、触らせてもらえなくなったりしてしまうのである。
そんな仕打ち俺は耐えられない。

「ダメですよ。部屋まで送りますから、ね、副長?」
「嫌だ・・・それと、俺のことは名前で呼べ」

副長の目が据わってきていて、正直怖かった。

(据え膳食わぬは男の恥!!だよなぁ・・・で
も、明日からの仕打ちも怖いしなぁ)
「さーがーる!!」

俺がどうするか悩んでいると、服の袖を引っ張り催促してくる。
そんなにかわいくおねだりされたら言うことを聞いてあげたくなってしまう。
結局、俺は副長の誘惑には勝てなかった。

「はぁ・・・分かりました・・・一緒に寝るだけですよ・・・十四郎さん」
「おぅ」

十四郎さんは局長にも沖田隊長にも見せないであろう満面の笑みを俺に向けてくれた。
これ以上の幸せはこの世にあるのだろうか?
俺はもうすごく嬉しくなって、十四郎さんの唇にキスをする。

(これくらいなら平気だよね・・・これ以上俺を酔わせないで下さいよ)

軽く触れ合うくらいのキスをたくさんして、俺たちは眠りについた。


翌朝。

「山崎ぃ!!起きろ、てめぇ!!」
「な、何ですか副長!!」

朝一番に副長に胸倉をつかまれて、目を覚ます。
副長の目を見てみると、目の瞳孔が完全に開いていた。
俺はなんとなくヤバイ気がした。

「なんで俺がてめぇと寝てんだよ!!・・・てめぇ、俺をここに無理やり連れてきてしただろ?」
「してません!!てゆうか、副長が俺の部屋に来たんですよ!!」
「嘘付け!!俺がんなこたぁするか!!・・・山崎、てめぇとはしばらく話さねぇからな」

すぱんと勢い良く襖が開けられ、怒った副長は俺の部屋から出て行く。

(もう、どうしてこうなるの?!ホントに何もしてないのに〜・・・こんなんなるんだったら、昨日抱いちゃえば良かったかな・・・)

はぁ、と自然にため息が出てくる。
何もしていなくてもやっぱりとばっちりを受ける山崎退なのであった。

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