小説(銀魂・原作)
□ぬくもりをもとめて
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襖の隙間から冷えた風が吹き、頬を撫ぜる。
その刺激で職業柄眠りの浅い俺は目を覚ました。
枕もとの時計は朝の4時を指していて、外はうっすらと明るくなり始めている。
ふと隣を見てみると、一緒に寝ていたはずの銀髪の男がいなかった。
ふとんはまだ暖かかったので、いなくなってまだそんなに経っていないのだろう。
(こんな朝早くに帰ったりしてないよな・・・?)
起き上がってあたりを見回そうとすると、襖が開く音がした。
「あり?土方君起こしちった?」
振り向くと天パの髪を寝癖でさらにぐしゃぐしゃにした男が立っていた。
おおかたトイレにでも行っていたのだろう。
「別にてめぇのせいじゃねぇ。勝手に目が覚めただけだ」
目が覚めて隣に銀時がいなかったことを寂しく感じていたとばれないようにぶっきらぼうに言い返す。
そんな俺の言い方に慣れているせいか、気にせず銀時はあくびをしながらふとんに入ってきた。
「今日早番じゃねーよな?まだ、寝んだろ?」
俺の返事を待たずに、銀時は俺の肩を掴むと無理やり横にし、ぎゅっと抱き寄せる。
銀時と一緒に寝るときはいつも窮屈なほどくっついてきて、俺はこれじゃ逆に寝むれないんじゃないかと思う。
前に理由を聞いてみたが、近くに誰かいると安心して、怖い夢を見なくなるからだ、と見たことのないとても寂しそうな顔をしてそう言っていた。
俺のほうも銀時に抱かれているときはなぜか心が満たされるから、くっついて寝るのは別に嫌じゃない。
互いの裸の肩がぶつかるほど近くにいるため、銀時の甘い匂いが鼻をかすめる。
「・・・銀」
銀時に聞こえないほど小さな、甘えるような声でつぶやくと、俺は広い銀時の背中に手を回し、寝ぼけたふりをして顔を適度に引き締まった胸に埋める。
銀時はそんな俺に気づいているのか、気づいていないのか分からないが一層強く抱きしめかえしてきた。
(・・・大好きだ・・・今までこんなに強く他人を想ったことはない)
それからそんなに経たないうちに、銀時は再び眠りについた。
銀時の規則正しい寝息を聞きながら、俺も寝た。
朝になったら俺たちはまた互いに意地を張り合ってしまうのだろう。
こんな時にしか甘えられない自分をいつまで銀時は好きでいてくれるのだろうか?
それは、いつも俺の中にある疑問。
そして、ずっと解決できないでいる疑問。
あいつに嫌いだと言われてふられるまでは、どんなに好きだと言われてもこの疑問は俺の心に残り続けるのだ。
・・・だから、今はこの幸せを黙って俺は享受するだけだ。