小説(銀魂・原作)

□I stand near you
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見上げるとそこには青。
空には雲ひとつなく太陽だけがさんさんと輝いていた。

「あったかいなぁ。春も近いのかな?」

ぽかぽかの日差しを受けていると、穏やかな風が吹き少し長めの髪を揺らす。
つい昨日まで監察の仕事が入っていたので、こんなにゆっくりできたのは久しぶりだった。
屯所で一休みしてきた俺は久しく見ていないあの人のもとに向かった。


なんとなく音を立てないように階段を上る。
玄関の前に立つとなぜか胸がドキドキしてき
た。

(う〜、顔が火照ってる・・・)

手のひらを頬に当てると指の冷たさが気持ちいいほどであった。
深呼吸してそっと戸に手を伸ばすと、もう少しで触れるというところで戸が勝手に開いた。

「よぉ、ジミー君。さっさと入ってくればいいのに」
「っ、旦那、気付いてたんですか?」

本気でびっくりして声が少し裏返った。
旦那は俺が気配を消して近付いてもだいたい80%ぐらいの割合で俺に気付いた。
気付かれるとちょっぴり監察としての威厳みたいなのが傷付くんだよね。

「もちろん、銀さんの愛のセンサーをなめんなよ?おいで」

そう言われると俺は旦那に誘われるように万事屋に足を踏み入れた。
旦那の冗談のおかげかさっきまでの緊張はすっかりなくなっていた。

「ちょっと散らかってっけど気にしないで〜」

部屋を見渡すと服や食べ終わったものなどがいたるところに置いてあった。
一応お客さんを迎える部屋なんだからもう少し綺麗にしたほうがいい気はした。
俺はどうにか空いている床を通ってソファに座ると旦那もお茶を持って俺の隣に座った。

「2週間ぶりぐらい?どっか捜査にでも行ってたの?」
「そうですね」

旦那は俺の襟足を軽くもてあそびながら俺に尋ねてくる。
俺は旦那の手が心地よくて知らぬ間に身を預ける形になっていた。

「どこに?」
「えっとレストランですけど・・・本当は秘密なんですからね、これ」
「へぇ、レストランってウェイトレス?・・・
っ痛」

バチッという鋭い音が部屋に響いた。
旦那の額に俺のでこピンがヒットしたのだ。

「ウェイターです!!更衣室で着替えなきゃいけないんですから、ウェイトレスじゃ男だってすぐばれちゃいますよ!!」

俺が声を荒げると旦那は少し涙目で額をさすっていた。
そりゃ捜査のときに女装することもあるけど、それは着物だからなんとかごまかせているだけだ。
洋服では身体のラインが出てしまうので男だと一目で分かってしまうだろう。
それなのに旦那は“ジミーならばれないと思うよ、かわいいから”とか普通に言ってくる。
かわいいかどうかはともかく、女装がばれないというところには少しどうよって思う。
確かに旦那とか副長とかよりは筋肉ないけど、並みの男よりはあると思うんだけどなぁ。

「はいはい、謝るからそんな悲しそうな顔しないで。こっちおいで」

そう言って旦那は自分の腿のあたりをぽんぽんと叩く。
つまりその上に乗れってことだ。
一瞬どうしようか悩むけど変に意地をはって気まずい雰囲気にはしたくなかったので、俺は旦那と向かい合うようにまたがって座った。
旦那の首に手を回すと、旦那は俺の背中からお尻にかけてそっと撫でてきた。

「あぁ、退は相変わらず良い匂いがするのな」
「今日は特に何もつけていませんよ?」

というかいつも何もつけてないんだけどな。
仕事中に香水をつけることはあるけど、そういう日は一回屯所に帰って匂いを落としてから会いにいくし。

「う〜ん、なんだろう。退のまとってる雰囲気が優しくて和むっていうかさ」
「それだったら旦那はいつも甘い匂いがします」

俺は笑いながら旦那の髪に顔を埋める。
くるくるした髪が頬をくすぐる感触を楽しみながらその髪に口付けていく。
旦那も負けじと俺の肩口にキスをし、赤い華を散らせていく。

「んっ、あんまり痕つけないで下さいよ」
「平気平気、ぎりぎり見えないところにつけて
るから」

それって全然平気じゃない気がするんですけど。
抗議の意味を込めて旦那の髪を引っ張ってみるけど、そんなことで止める旦那ではない。
そうこうするうちに旦那は俺の着物の襟を掴んではだけさせていた。
浮き出た鎖骨を舐められると身体がぞくぞくする。

「こんななめらかな肩とか他の男に見せてたとか思うと腹立つな。変な目つきで見られなかった?」
「俺の身体見て変なこと考えるの旦那だけです
よ」

旦那は俺の言葉には納得してない様子だったけど、気にしないようにするためか俺を愛撫するのを再開させた。
そのまま旦那は舌を降ろしていったが、へその少し上のところで動きを止める。

「ここ、どうしたの?この前はこんなところに傷なんてなかったよね?」

ここと言いながら舌でつんつんと押される。
俺は傷跡を舐められた痛みと快感に声を上げそうになるが必死に抑える。

「あ、それは・・・この前ちょっと油断、しちゃってっ」

“ふーん”と旦那は気のない振りをしていたけど少し機嫌が悪くなったような気がした。
その証拠にしつこいくらいに刀傷を舐め続け、俺は押し殺した声を漏らした。

「なぁ、退?」

そう言うと旦那は顔を上げ、旦那の手によって俺は旦那のほうを向かせられた。
するとぎゅっと抱き締められ、耳元で囁かれる。

「俺の知らないところであんまり怪我とかすんなよ・・・勝手にいなくなったりするんじゃねーぞ」

旦那の言った言葉に身体が硬直してしまう。
そんなこと言われたって保障なんてどこにもない。
俺が監察を続けている限りいや真選組に属する限り、いつ死んでもおかしくないからだ。
河上万斉に刺された一件で俺はそのことを強く実感した。
突然いなくなってしまう恐怖は常に俺につきまとっているのだ。
だからって旦那に何の断りもなしに死ぬのは俺だって嫌だ。
伝えたい思いなんていっぱいある。

「善処します・・・でもそのことについては旦那にも約束して欲しいです」

旦那の唇の端に口付けながら答える。
俺は気付くと傷だらけになっている旦那を思い浮かべる。
万事屋という職業柄危険な仕事もしなくてはいけないというのも理由の一つだろうが、旦那の優しい性格ゆえに困っている人を見捨てられないからというのが大きな理由になっているのだろう。
けっして自分のためには剣を振らず、愛する人を守るためだけに剣を振るう旦那の姿はたまに痛ましく感じるときがある。
俺が不安げに旦那の顔を覗くと、旦那はすっといつもの顔に戻った。

「了解。お互いヘマしないように気をつけないとね〜」
「そうですね」

クスクス笑い合っていると俺に触れていた旦那の手つきが変わった。
腰のあたりを撫でていた手が前へ回され自身に軽く触れる。

「んっ・・・やぁ、旦那ぁ」
「ダメだよ退。こういうときは名前で呼ばないと」
「はい・・・銀時、さん」

俺は銀時さんが触りやすいように身体を横に開く。
身体に熱が帯び始めると俺も銀時さん自身に手を伸ばし、互いに高め合った。
その後1ラウンドで満足できるはずもなく、夜が明けるころまで俺たちは愛し合っていたのだった。

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