小説(銀魂・原作)

□ハッピーバースデイ
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明日は俺の恋人である、高杉晋助の誕生日だ。

銀色の髪を風に揺らし、俺はぶらぶらとかぶき町を歩いていた。

「どうすっかなぁ〜」

俺は高杉の誕生日プレゼントを探していた。
まぁ、別にあげなくてもいいのだが、去年高杉にプレゼントを渡していないことを理由にだいぶ手荒なことをされ、来年はちゃんとあげようと心に決めていたのだ。

(朝起きられなくなるのは勘弁して欲しいよ、まったく。俺らはガキじゃなくて、もういい年なんだからよぉ)

かぶき町ならたいていの物はそろっているから、何か高杉の気に入るものはあるだろうと思っていたのだが、高杉の欲しいものがまったく浮かばず、こうして歩きながら探しているうちに2時間は経ってしまった。

(あいつは三味線とか詩とか好きだけど、三味線買うお金もねーし、俺が詩をつくってプレゼントするわけにはいかねぇしなぁ)


見つからなさすぎて泣きたくなり、とりあえず甘味処に入って気分転換をすることにした。
甘いみたらし団子を食べながら、ぼんやりしていると、ふと近くの席の若い女の子たちの声が耳に入ってきた。

「ねぇ、彼氏の誕生日プレゼントどうすればいいと思う?」
「私をプレゼント!!で良いじゃん(笑)」
「本当に!?それしてる人なんてホントにいるのかな?」

クスクスと笑っている女の子を尻目に、なんとなくそんなことをしている自分を想像してみた。

(いやいやいやいや、いくら銀ちゃんでもそんなバカなことはしねぇから!!)

結局恋人の欲しいものが分からない自分にショックを受け、店を後にした。


12時が過ぎ、8月10日になってしまった。
真夜中の万事屋の戸をインターフォンも鳴らさず勝手に開け、あいつは入ってきた。

「よぉ、銀時」

俺の恋人は半端なく上機嫌だった。
彼の口角はいつもよりあがっていて、むしろ怖いぐらいだった。
多分、今年も俺がプレゼントの用意などしてないだろうと思い、俺にあんなことやこんなことをしてやろうと嬉々してきたのだろう。
だが、今年の俺は違うぞ、高杉!!


「誕生日おめでと!!晋助!!」
「っ!?」

チュっと音をさせて、俺は唇を高杉のそれから離し、にっこりと晋助に笑いかけた。

「俺からの誕プレはキスと“晋助”呼びだから」

高杉へのプレゼントが見つからなかった俺は、あの女の子たちの言うことを実行するしかもう方法はなかった。
しかしさすがに「俺をプレゼント」は恥ずかしいし、あいつに何をされるか分からなかったから止めてレベルを下げてキスだけにしておいた。

「ちっ、去年のこと覚えていやがったのか。今年も可愛がってやろうと思っていたのになぁ」
「銀ちゃんだって成長するんですぅ!!」
「・・・だが、こんなことで俺が満足するとでも思ってんのか?」
「へっ?!」

見えていた景色が反転し、見慣れた万事屋の天井が俺の視界に映った。
つまり高杉に押し倒されたのだ。

「あの〜、高杉くん・・・?」
「晋助って呼んでくれんじゃねぇのか?それに、キスして俺を誘っておいてそれきり放置はねぇだろ」

どうやら、俺は墓穴を掘ってしまったらしい。

「せいぜい俺を満足させてみせろよ」
「待、待って高杉!!・・・んっ!!」


それからの俺は、言うまでもなく朝まで高杉の好きにされたのであった。
去年ほど無理やりにはやられなかったがそれはあくまでも去年との比較であって、俺には最後までの記憶がない。

朝ではなく昼に近い時間に目を覚まし、腰に鈍い痛みを抱えながらやっとのことで起き上がると、案の定高杉はいなかった。
指名手配犯のため、いつも俺が起きる時間には跡形もなくいなくなっていて、高杉に会っていたことを夢での出来事のように感じることが多かった。
のどに渇きを覚え、いちご牛乳でも飲もうと、リビングの方へ行ってみると机の上に紙切れがおいてあり、そこには、

「体、平気か?お前からの誕生日プレゼント嬉しかったぜ」

と、綺麗な字で書いてあった。
そんなたった数行しか書かれていないメモだったが、俺の心は嬉しさを感じていた。
だが、来年は欲しいものをちゃんと事前に聞いておこうと心の底から思ったのであった。

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