夢の世界へいざ行かん!

□VERY CHRISTMAS
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ゲームセンターから追い出された一行は帰路につく。
例によってあの二人の文句は止まらないが総無視だ。

「あ、あれ風船が…。」

商店街の大きなクリスマスツリーに風船が引っ掛かっているのを春ちゃんが見つけた。
すぐそばには泣いている女の子。

「よし!お兄ちゃんたちがとったげるぜ!ゆっきーオレをかつぎなさい!」

祐希の肩車でツリーのてっぺんまで手を伸ばす千鶴。
ああ…それはちょっと、いやかなり無理がある気がしますよ。

「悠太兄ぃ、私、嫌な予感がする。」
「うん、オレも。」

二人で顔を見合わせた時。

「「あ。」」

案の定、嫌な予感は的中した。
風船を取ろうとした二人は、あろうことかツリーの方にバランスを崩しそのままツリーにダイブ。
結果、ビデオクリスマスの予定が無償で手伝いをすることになってしまいました。






バイト用のサンタコスチュームに着替えた私たち。
感動的だったのが、

「やだ…春ちゃんやっぱり女の子だったんですね…!」

春ちゃんのミニスカサンタ。
違いますようっ!と必死に否定する春ちゃんはもう何をやっても女の子にしか見えない。
ほら、その証拠に小学生くらいの少年にパンツ見せろと迫られてます。

「はぁ〜、春ちゃん可愛い…。」
「おい、おまえもパンツみせろよ!」

うっとり春ちゃんに見とれてたらガキ大将っぽい少年がニヤリと見上げてきた。
全く、最近の若者は…。
小さくため息を吐いてから、視線を合わせるようにしゃがみこんだ。

「私のパンツは高いですよ。一回なんと100円です。しかも前払い制です。」
「ひゃ、ひゃくえん、だと!?くそっ、なんてやつだ!」
「さあ、どうしますか?本当にパンツごときで大切な100円を払いますか?」
「はいはいはい!そのパンツ買ったあー!!」
「ちーさんシャラップ。」

便乗してきた千鶴を一蹴したところで、うんうん唸っている少年に目を向ける。
ふふふ、このくらいの子にはとりあえず“100”という魔法の数字を出しておけばオッケーだ。
この歳の“100”は絶対的な数字なのです。

「ひゃくえんとは、ひきょうなおんなだ!こんかいのところはみのがしてやるよ!ばーか!」
「…、」

拙い喋りのくせによく難しい言葉を知ってるものだ。
走り去った少年を見送ると、後ろからぎゅっと腕がまわった。

「なぁに、祐希。」
「お兄ちゃんは売春反対ですよ。」
「そんな犯罪行為しませんて。」
「ダメ、絶対。」
「だからしませんて。」

ポンポンと腕を叩けばしぶしぶ持ち場に戻る祐希。
私もお手伝いを再開。
子どもたちに夢(という名のお菓子)を配ります。





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