夢の世界へいざ行かん!

□ベイビーパズル
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買い物の帰り道。

「あれ…、」

前方に見えるは春ちゃんと千鶴くんではないですか。
あと…、何故だか金髪女性。
今日は金髪デーなんですかね。

「ああ!ミュウ!!!」
「え、あ!心結ちゃん!」

焦ったように呼びかけられて首を傾げる。

「そんな叫ばなくても聞こえますって。ぅわっ…、」

近づいてみれば二人がすがる様に抱きついて来たので千鶴だけペイっとひっぺがす。

「で、どうしたんですか。」

しくしく泣いているちーさんなんて無視だ。

「じ、実は…、」

春ちゃんの話によれば、勉強から逃げ出した矢先そこの外人さんが千鶴をマイケルと勘違いしてアメリカに連れて行こうとしているらしい。

「あー、短い付き合いだったけど楽しかったよ今度遊び行くね。」
「おまっメチャクチャ棒読みじゃんか!ゆっとくけど春ちゃんも連れてかれるんだからな!」
「えっ春ちゃんも?それはやだな…。よし、ちょっと話してみるね春ちゃん。」
「ゆっきーたちと同じ反応すなっ!」
「いや、それほどでも。」
「誉めとらんわ!むしろショックすぎてちーさん立ち直れない!」

騒がしい触角だ。

「て、あれ…?」

ちょっと待ってくださいよ?
千鶴は誰に間違えられてるんだって?

「………マイケル?」

ええーと、ついさっき聞いたような。

「Excuse me lady.Michael you are looking for was in the supermarket just now.(ちょっと失礼ご婦人。あなたが探すマイケルはついさっきスーパーにいましたよ。)」
「What you have to say!I'm in front of Michael!(何言ってるのあなた!マイケルなら目の前にいるじゃない!)」

完璧に勘違いしてますな。
でも…よぉく見てくださいよ。

「Do they just have to antennal Michael?(マイケルには触角がついているんですか?)」
「Antennae?It does not necessarily have arrived!(触角?そんなのついてるわけないじゃない!)」
「That's right.So please look well.(ですよね。じゃあよぉく見てください。)」
「What?(何?)」

目が悪いのかだいぶ至近距離で千鶴を見つめる金髪女性。
彼をマイケルと信じて疑わない彼女は最初こそブツブツ文句を言っていたが、次第に口は閉ざされ細めていた目は徐々に開かれて驚愕の表情をつくりだした。

「Oh my god!(なんてこと!)」

オーマイガー頂きました。

「I do not have this strange tentacle Michael!(マイケルにはこんな変な触角ついてないわ!)」
「Understand.Michael has a real supermarket.(わかります。本物のマイケルはスーパーですよ。)」

先ほど知り合ったマイケルには悪いが大人しくアメリカに帰ってもらおう。(春ちゃんの為に。)

スーパーが分からない彼女に要のお母さんは道案内をするため付き添うらしい。
金髪女性はごめんなさいねと言って足早に去って行った。

「…た、助かったの、か?」
「た、助かった、みたいです…。」

千鶴と春ちゃんは気が抜けたようでその場にペタリと座り込む。

「心結ちゃんのおかげですっ!ありがとうございます心結ちゃん!」
「いえいえ、春ちゃんの為なら。」
「いい加減泣き崩れるぞちーさん。」

座り込む二人に合わせてしゃがみこめば、

「あれ、春無事だ。」
「あ、ミュウがいる。」
「んのバカザル!オレに迷惑かけてんじゃねえ!」

悠太兄ぃたちが来た。
どうやら千鶴と春ちゃんは勘違い事件のヘルプを要請していたらしい。

「ちょうど心結ちゃんが通りかかってくれて助かったんですよ。」
「いやーホント!このまま日本に帰ってこれなくなるんじゃないかと思ったね!」
「千鶴いっそアメリカつれてかれた方が英語克服できたんじゃないの?」
「やっ、やーっだゆきりんアメリカンジョークうますぎ〜っ。」

あははは☆って笑ってるけど顔引きつってるからね。

「お前ら帰ったらソッコー勉強な。」
「…私人助けしたから免除ってことで。」
「お前の科学が一番心配だアホ!」
「!」
「さも驚いたかのような反応してんじゃねえよ!」

要は手厳しい。
いつもツンツンしてる要相手だとお母さんがかわいそうだ。

「でも、親ってそんなもんなのかねえ。」

めげないお母さんに拍手。

「私にもわかる日がくるのだろうか。」
「科学は一生かかっても無理だろ。」
「違うわバ要。」

要がキーッてなってるけど無視します。






“親”は子どもに無償の愛情を注いでいて。
まだまだ学生の自分から見れば世の中のほとんどの人が年上で。誰かしらの“親”で。

つまり今自分がいる世界は、たくさんの無償の愛で埋め尽くされている。

いつかはわかる日がくるのだろうか。
親の愛を。
いつかは与えることができるのだろうか。
無償の愛を。

全然想像なんかつかないけれど、与えることができればいいな。

受け取った愛とそれ以上の無償の愛を。





END.
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