夢の世界へいざ行かん!
□りんごのとなり
3ページ/5ページ
「あー…うー…、」
「なんなのよさっきから、鬱陶しいわね。」
今日うちのクラスでは間近に迫った文化祭の係りや出し物決めをするらしく、放課後にも関わらずわいわいと賑やかだった。
「うぅ、茉咲ちゃん…。私はどうすればいいのかな。」
隣の席の茉咲ちゃんはいつもと違う私に戸惑っているようだ。
「…なによ、なにかあったの?」
「あのね…、胸が、モヤモヤするんです。」
「モヤモヤ?」
「ある人のことを考えると、ギュウって苦しくなる…。」
「心結…、それってもしかして、」
「悠太兄ぃと高橋さんのことを考えると…!」
「…は?」
「悠太兄ぃはもちろん大好きなんだけど、高橋さんも可愛くってね!?もーどっちをとればいいのか分からなくって…!」
「………。」
呆れた目をした茉咲ちゃんにゴンッと頭を叩かれた。
「いたっ!」
「ばっかじゃないのあんた!お兄ちゃんに女の子じゃどっちにしろ成立しないわよ!心配して損した!」
「…心配してくれたの?」
「あっ、」
「もーこれだから茉咲ちゃん大好き!やっぱ一番は茉咲ちゃんかなー。」
「ちょ!離れなさいよ!」
「いたっ!」
嬉しくて茉咲ちゃんに抱きつけばまた頭を叩かれて引き剥がされた。
やっぱりツンデレさんだ。
「あ、祐希たちだ。」
話し合いも終わり一人帰路についていると、ファーストフード店によく知った顔を見つけ入店。
「ゆーうきっ。」
「ミュウ。」
迷わず祐希の隣に座る。
もちろんジャマな要くんを追いやって。
「あ、お誕生日ですか?オメデトー。」
「おまえのせいだろーが!」
一人飛び出すように、いわゆる誕生日席に座っている要くんをからかっていると、向かいの春ちゃんが声をかけてきた。
「心結ちゃん、クラスの話し合い終わったんですね!お疲れさまでした。」
「うん、ありがとう春ちゃん。」
「ハンバーガー食べにきたんですか?」
「あぁ、違うよ。みんながちょうど目に入ったから…、」
…て、アレ?
「ゆーたにぃは?」
首を傾げていると隣の祐希が制服の裾をクイと引っ張った。
「ん?」
「ソコ。」
示す方に視線を向ければ、
「…………。」
離れた席に悠太兄ぃと高橋さんがいた。
「なにこれ!雲!?霧!?」
「はあ?何言ってんだお前。」
要のツッコミなんて聞こえない。
心にモヤモヤするものがかかった。
千「ハイハイ!みんなでメールだしまくって着メロでジャマするというのはどうでしょう!?」
悠太兄ぃの邪魔をしようとする千鶴くん。
正直どうでもいいです。
ぐだってる祐希に寄りかかって肩に顔を埋める。
ぎゅう…っ、と腕に抱きつけば空いた手でポンポンと頭を撫でてくれた。
千「あっハイハイ!紙コップで糸でんわ作って片方あっちに置いてくるというのはどうでしょう!?」
もうそれ馬鹿でしょ。
いや、わかってたけどね?
「申し訳ございませんお客さま、それは他のお客さまのご迷惑になりますので…。」
ほーら怒られた。
騒ぐのは場所考えなきゃねー。
てゆうか、…聞いたことある声だけど。
要春千「わ゛ーーーっっっ!」
「もー、ほんとうるさいってば。」
祐希の肩から顔を上げれば、離れた席に座っていたはずの悠太兄ぃがすぐそこにいた。
千「い、いつからそこに?」
悠「君たちこそいつまでここに?そろいもそろって学校からストーカーってさあ。」
千「バレてるし!!?」
悠「バレバレです。」
「え、てゆーか君たちストーカーしてたの?」
ヒマだねえ、と呟いたら自分だって気になるくせにと祐希にボソリと返された。
「ゆーき。」
「なんですか。」
シラッとするもんだから寄りかかる力を倍にしてやった。
要「つか彼女さんは?」
悠「高橋さん?帰ったよ。」
要「帰ったって…そこはお前送ってけよ。家までさあ…。」
悠「あー…だったですか。」
…あれ?
悠太兄ぃに違和感。
千鶴がなんで付き合ってること言わないんだと抗議する。
千「ゆうたんはさあ、あの子のこと前から好きだったの?好きじゃないのに告白オーケーしたから、なんかオレらに言いづらかったんじゃないの!?ねえ!」
悠「……あの…ポテトが…。」
千「ああ!!」
バラバラと床に落ちるポテトに気が向く千鶴たちを余所に、悠太兄ぃは心此処にあらず、みたい。
「ゆーき、」
隣を見ると祐希も悠太兄ぃの変化に気付いたようで、ジーッと悠太兄ぃを見つめていた。
.