夢の世界へいざ行かん!

□いつかの夏
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「ただいまー。」

玄関を入ると、リビングからピコピコと機械音が聞こえた。
どうやらまだやっているらしい。

「はい、差し入れだよ。ボランティアで人助け中のゆーきくん。」

ソファーの前で相変わらずテレビに向かってる祐希のほっぺたにアイスをピタリとくっつけた。

「つめたい。」
「アイスですから。」

ゲームを一時中断して振り返った祐希にアイスを渡す。

「おかえり。」
「ただいま。千鶴に会ったよ。」

そう言ってからソファーに座っている悠太兄ぃにもアイスを渡して、隣に座る。

悠「千鶴?さっきウチ来たよね?」
祐「あー、うん。」
「人助けで忙しいから追い返したんでしょ?千鶴、完全に信じちゃってましたよ。」
祐「さすが千鶴くん。」
悠「そんなこと言ったの、祐希。」
祐「だってゲーム邪魔されたくなかったんだもん。」
「まあわかるけどね。私だって漫画邪魔されたくないもん。」
悠「まったくキミたちは…。」

ふぅ、とため息をはいた悠太兄ぃはぴりぴりとアイスの袋を開けた。

「それでね、千鶴、浴衣着てこいって言うの。」
悠「浴衣?」
「今日お祭りでしょ?春ちゃんが言ってたやつ。」
祐「そういえば言ってたかもね。」
「オレも着るから一緒に着ようって。ハーフってなんだかんだ浴衣着たがるよね。」
悠「それは千鶴だけでしょう。」

全国のハーフに失礼だよ、と言う悠太兄ぃのアイスにパクリと食いつく。

悠「あ、こら心結、自分の食べたんでしょ?」
「食べたけど。」
悠「お腹痛くなるよ。」
「そんなにヤワじゃないもーん。」

そう言って悠太兄ぃに抱きつけば、まったくもう、と呆れながらも受け入れてくれる。
んー、悠太兄ぃ大好き。

祐「ミュウ。」
「ん?」

アイスを食べ終わった祐希が棒をくわえたままこちらを向いた。

祐「浴衣、着なよ。」
「えー、祐希までそんなこと言うの。」
祐「だってお祭りだよ?イコール浴衣でしょう。」
「そんな方程式ありません。」
悠「でも心結、お兄ちゃんも見てみたいなぁ心結の浴衣。」
「う、悠太兄ぃに言われたら断れないよーう。」

グリグリ頭を押しつければ、それさえも受け入れてくれる悠太兄ぃ。

「ずるい…。」

大好きレベルがまた上がった。

祐「まあいーじゃないですか。これも人助けだと思って。」
「祐希くんには言われたくないです。」

こうして着る羽目になった黄色の浴衣。
中学生の時に買ったものだから少し子どもっぽいけど…、まあいっか。
締め付けられるお腹に息が止まるかと思った。





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