夢の世界へいざ行かん!

□星の数だけ願いを
2ページ/3ページ


祐「で、来てみたはいいけどさ。この時間じゃ閉まってて当たり前だと思うんですけど。」

ですよねー。
夜に開いてたら防犯上どうかと思うもんねー。

春ちゃんの為にと茉咲ちゃんが、今私が窓を割って…とかぶつぶつ言ってるけど。
おーい、それ犯罪ですよー。

要「まぁ落ち着けお前ら」

得意げに言う要は校舎沿いに少し歩く。
そしてある扉に手をかけると。

ギィイイ…。

千「おー」

すんなり開いた。

春「すごーい。なんでここは鍵がかかってないってわかったんですか?」
要「ふっ、生徒会委員のこのオレに知らねーことはねぇぜ。こわれた鍵を直してほしいって申請が出ててそのままにしてたからな。」
春「へー」

へーって春ちゃん、何も疑問に思わないんですか。

悠(ただの職務怠慢じゃん…)

悠太兄ぃの心の内が手に取るようにわかった。











千「こんな暗いとさ、曲がり角すらあやしく見えてくるよな。何かが待機してそうで!」

夜の校舎は予想以上に暗い。
頼りは差し込む月明かりくらい。
あとは…非常階段の明かりとか。
あれって怖いよね、ぼんやり浮かぶ緑色。

千鶴はニコニコしてるけど、茉咲ちゃんは…。

千「もしかしてビビってんの?」
茉「そっそんなこと…っ」
要「ビビってねえよ!!」
千「はい?」
要「い、いや…なんでも…。」

ああ、要くんもでしたか。

「顔、赤いですよ(ボソッ)」
要「う、うるせえ!」

ムキになっちゃって。
こーゆーとこカワイイよね要くんは。

千「夜の学校ってなんかウキウキすんな!」
悠「ウキウキって…何か出そうなんじゃなかったの?幽霊とか。」
千「いや、ほんとに出たらヤだけどさー。窓からわりと光が…」

言葉が途切れた千鶴。

「なに?」

どうしたのと顔を向ければ。

千「で…っ、でたぁーーーーーーー!!!」

ぎゃあーっと叫ばれて思わず耳を塞いだ。












春「ほっほんとに見たんですか?幽霊。」
千「うん…っ、子供の幽霊が中庭からオレらのこと見てた…っ。」

ぐすっとべそをかく千鶴は、先ほど幽霊を見たと言う。

「…私も見たけど……。」
千「ほーらやっぱり!もーダメだ〜〜〜っ、オレら呪い殺されちゃうよ〜〜〜〜っ。」

いや、見たけど…。
千鶴の言ってるのは人の子でしたよ。

…って、敢えて教えない。
だってその方が面白いでしょ。

要「とにかく!さっさと忘れもん取って帰りゃいい話だろ。行くぞ。」

要が勢いよく立ち上がる、けど。

しーーーーーーーーーーーーん。

誰も行きたがらない。

「「「「「負けたら先頭!ジャーンケーン」」」」」

ポン!で負けたのは…、

千「ぜってーやだ!幽霊が目の前に出てきたらどーすんのさ!」

千鶴くん。

悠「戦えば?うまくいけば教科書に名前のるかもよ。」
千「うまくっていうかそれ下手すれば死ぬじゃん!」
祐「大丈夫!運は君の味方だ!」
千「ジャンケンで負けた時点で見放されてますから!!」

やんややんやで嫌がる千鶴。
まったく、日本男児が情けない。
あ、ハーフだっけ。

「はーいはい、わかりましたよ、私が行きますよ先頭。」

ひらひら手を振って階段を上っていく。

「ほら、早く行きますよー?」
千「な、なんかミュウ男らしい!ちーさん惚れそう!」
「まったく、みんな背中にいっぱい憑けてる癖に今更ビビりすぎー。」

ご先祖様の霊が見守ってくれてるのよー。
春ちゃんに至っては何故だかたくさんの動物の霊も憑いてます。

千「…………え?」
「ん?」
千「…い、いやいやいやいや、聞き間違い!今の絶っっっ対聞き間違い!」
「?」

千鶴を始め、要も春ちゃんも茉咲ちゃんも何故だか真っ青。
具合悪いんなら病院行きなさいよー。

心なしか千鶴がさっきより、こえーこえー連発している気がした。












「はい、とーちゃっく。」

階段を上りきったところで、千鶴ははぁはぁと息を整える。

「いや、千鶴くん人の後ろ張り付いてた癖になにそんな疲れてんのさ。」
千「いやー!憑かれてるとか言わないでえ!!」
「はあ?」
春「あっ、あの…っ。」

再び千鶴が騒ぎ出した時、春ちゃんが申し訳なさそうに口を開いた。

春「ここからはボク一人で行きます…から。」
茉「そんなのあぶないわよ春ちゃんっ。」
春「いえ…元はといえばボクのせいですから。」

茉咲ちゃんが止めたけど、春ちゃんは責任感じちゃってんだろうな。

悠「んじゃここで待ってるからダッシュで行っといで。」
春「はい。」

悠太兄ぃの言葉に背中を押され、春ちゃんは駆けていった。












千「きゃーっこわーいっ。けしてあたしをはなさないでえっ!」

ぎゅうと要の首に抱きつくのは千鶴。

千「みーたいなことが一つ二つあればたとえ電気がついてなくても二人の愛に火がつくってもんなのにねー。この暗やみをフル活用できるってもんなのにねー。」

千鶴がぶつくさ言うから私も真似してやってみる。

「きゃーっこわーいっ。けしてあたしをはなさないでえっ!」

隣にいる祐希にぎゅうと抱きつくと祐希ものってきてくれる。

祐「おーけーわかりました。決してあなたを離さないと誓いましょう。」
「祐希さん…。」
祐「心結…。」
千「て、こらそこーーー!!!!きょ、きょうだいでイチャイチャすんじゃねえ!!」
祐「なにどもってんの千鶴。」
「ドキドキしちゃった?暗やみフル活用しちゃった?」
千「反則だあ!!」

祐希といえーいってハイタッチしたところで、廊下の曲がり角に人影が見えた。

千「あ、春ちゃんおかえりー。」

千鶴が声を掛けたけどその人影から返事はない。

要「…春ってさ、あんなに背チビじゃなくねえ……?」

要が恐る恐る言った時、

す…

人影が揺れてこちらを覗いた。

千「でたーーーーーーっっ!!!」

千鶴の叫び声を合図にみんな一斉に走り出した。











要「いーでででで。んのバカ。なんで同じ窓から出んだよ。」

窓から外に出ようとした要と一緒に、千鶴も茉咲ちゃんも祐希も悠太兄ぃもおんなじ窓から出ようとする。

うん、そりゃキツいって。

「てゆーか祐希と悠太兄ぃはわざとだよね。」
悠「そーゆー心結だって同じ窓から出ようとしてるじゃない。」
「こーゆーのはのっとかないと。」

楽しさ半減しちゃうでしょ。

どちゃっと落ちた要と千鶴の上に、華麗に着地。
ぐえって声がしたけど気にしない気にしない。
(茉咲ちゃんもどちゃっと落ちたけどこの子は踏めません。)

千「要っちーこわかったよー」
要「はなれろ!うっぜえな!」
悠「いやーでるとこにはでるもんだねー。」

やんややってる横で茉咲ちゃんははっと我に返ったみたい。

茉「やっ、やっぱり戻りましょ。春ちゃんがまだ中にいるわ。」
千「あ!しまった!!」

可哀想な春ちゃん…。

悠「まあまあ落ち着いてみなさん。こんな時こそのケータイ世代ですよ。」

さすが悠太兄ぃ。
かっこいいです。

みんなでケータイに耳を寄せて春ちゃんの応答を待つけど…。

『留守番サービスに接続します。』

あら、留守電。

千「み、短い間でしたが…」
祐「春はいつまでもオレたちの心の中で…」

千鶴と祐希がアホなことをやってるうちにも、茉咲ちゃんの顔色が悪くなっていく。

「茉咲ちゃん?」

声を掛けた途端、だっと走り出した。

千「おーい待て待て待て!だーいじょぶだって!とりあえずここでご帰還を待ってだなあ。」
茉「………っ」

窓を乗り越えようとする茉咲ちゃんを千鶴が押さえるけど。

げしっ!

あ、蹴られた。

茉「あんたのせいよ!あんたがあんなに怖い怖い言わなかったら春ちゃん一人で行かなかったのよ!春ちゃんに何かあったらあんたのこと一生恨んでやるから!!」

泣きながら言った茉咲ちゃんは勢い良く校舎を走っていった。

「茉咲ちゃん心配なので、私も追いかけます。千鶴、相手が悪かったね。」

ぽかーんとする千鶴にチラリと目をやってから、茉咲ちゃんが消えた方へと足を進めた。






.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ