夏目総受け!
□空模様
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街中を歩けば至る所にあの人がいる。
デカデカと掲げられた看板。
店内に貼ってあるポスター。
有名雑誌の表紙。
そして今――、
『…今度海でも見に行きませんか?』
「…名取さん」
電化店にあるテレビがあの人を映し出した。
その隣には女の人。
あぁ―――、
どうしてこんな気持ちになるのだろう。
「煌めいてる貴方は、少し、嫌いです」
誰これ構わず、絶えず笑顔を見せるあの人は、おれの知らないあの人だ。
それでも、
おれにしか見せてくれない顔だってある。
「…会いたいです、名取さん」
ポツリとそっと呟いて、家路へと着く。
予定外に空いてしまった時間は、うちに帰って先生に埋め合わせてもらおう。
ポツリ、ポツリと降ってきた雫にはぁ…と深く深くため息を吐き出して。
(今日は本当についてない)
どんよりとした空を力なく睨みつけた。
END.
仕事でドタキャンの名取さん。