物語部屋T

□WOFhospital karte1
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 都内の一等地に構える総合病院【ワンドオブフォーチュン病院】には様々な患者が運ばれてくる。
 
 病人は勿論、怪我人、通院を目的とした患者もいれば緊急でやってくる患者もいる。
 
 皆、腕の良い医師や看護士を頼り、やって来るのだ。
 
 今年から新米看護士としてやってきたルルも昔はその中の一人であった。
 
 今でこそ元気が取り得のルルであったが、幼い頃は原因不明の腹痛で母親と共に定期的に通い続けていて、それが完治したと聞かされたとき、将来の夢に誰かの役に立ちたいと思い始めていた。
 
 自分が助けて貰った分、それを誰かに返したいと思う健気な心意気は将来の選択を促されたときも、変わらずにあった。
 
 そこで決めたのが看護士と云う職。
 
 両親には体が弱かったのだからと重々気をつけるようにと言われたが、それでもこうしていられるのも御医者様と看護士さんの御陰だったの、感謝の気持ちを誰かに返したいのと熱心に訴えるので両親も漸く頷いてくれたのである。
 
 そうしてどうにか看護学科がある短大に入学し、ぎりぎりの成績で卒業を赦され、国家試験もまさかの奇跡的な一発合格を向かえ、ルルなりの順風満帆な社会人生活が始まろうとしていた。
 
 家から通うように言われたものの、看護士専用の寮に暮しながら仕事をしたいと両親に伝え、半年と云う期間ではあるが了承をしてくれた。
 
 そうしてルルが職場として選んだのは幼い頃に通い続けたワンドオブフォーチュン病院だ。
 
 昔に比べてより設備が整い、且つ様々な科があるので少しでも多くの人達と触れ合えるとルルは考え、募集人数が科の総合で十名、倍率がまさかの四十倍と云う狭き門である枠に駄目もとで働きたいと志願したところ、奇跡の合格を知らせる通知が届いた。
 
 両親共々はしゃいで嬉しがった。
 
 短大合格以上に喜び、もう幸運が続かないのではないのかと思うほどルルは嬉しがった。
 
 但し、半年間は見習い扱いだと云う条件を出されていたが、それを過ぎて病院に必要な人材だと認められればきちんとした形で正式採用されると教えられも、それでもルルは頑張れると心から思っていた。
 
そうして始まった看護士としての生活は思っていた以上に大変で体力、精神ともに削るものであった。
 
 理不尽な事を患者に言われる事もある、我侭を言われる事もある、けれど持ち前の明るさと優しさでそう云った患者とも向き合い、心を通わせる事も少なくは無かった。
 
 職場の同僚も厳しい人もいるが優しい人ばかりで、厳しい人は最後には優しさがある人だとルルは理解していたので分からない事やもっと知りたい事等を教えて貰いたいと頼れば、頑張りやだと褒めてくれるようにもなった。
 
 それが認めてくれたようで嬉しくて、患者との触れ合いも自身を成長させてくれていると分かれば笑顔を絶やす事は無い。
 
 半年と云う見習い期間ではあったが、一日でも長くこの職場で過ごしたいと云う気持ちがあるとこのまま見習い扱いでも良いのじゃないのかとさえ思ってしまいそうになる。
 
 それほどルルにとって今の職場は恵まれたものであった。
 
 それがまさか、一日でも早くここから去りたいと思う日が来ようとは思いもしなかった。
 
 
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