物語部屋U
□咲き乱れる花のもとで再会を願う〜同棲ごっこ編〜
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今日はあの子達が帰ってくる日。
アルバロと二人きりは今日だけは四人の生活に戻る。
嬉しくないわけが無くて、朝から上機嫌で色々と準備をする。
お部屋の掃除もして、洗濯物も終えた。
こう云う私の主婦としての生活と学生としての生活、その二面を今でも続けている。
ミルス・クレアに復学をさせて貰い、学びたい事を学ばせて貰える素晴らしさを実感しながら勉学に励んだ。
私が学生生活を送っていた頃の面々はもういないのが少し寂しかったけれど、親子程に離れている新しい御友達が何人も出来て嬉しかった。
有難い事にそんな風に見られなくて、少し上のおねーさんと思われていたみたい。
デートに誘って貰えた事もあるけれど、私の薬指にある指輪を見せてごめんなさいと謝る事もあったわ。
以前、門迄アルバロが送って来てくれた事があった。
その日は休日だったけれど、提出物があって学院に行ってた。
提出物を出して廊下を歩いていたら、デートに誘ってくれた男の子がいてまた誘ってくれたの。
これからどうですか?って。
一度だけで良いですから、って。
勿論、受けるわけにはいかないもの、ごめんなさいって丁寧に御断わり。
例えお兄ちゃんと同年代であろうと、男の子だもの。
もっと若い女の子とデートしたら楽しいわよって門迄歩いていく。
若いって凄いのね、御願いしますって後を追いかけてこられて苦笑するしかない。
指輪だって外してないのに。
そうして門をくぐり抜けると待っていたアルバロと鉢合わせ。
まさか男の子と二人で出てくるとは思わなかっただろうから驚いたみたい。
マゼンタ色の瞳がキョトンとしてた。
「誰?その子」
「御友達の一人よ、門の外迄見送ってくれるって」
アルバロの腕に腕を絡めて、この人が私の大切な人なのよって教える。
だからごめんなさいって。
「君、何歳?」
「お兄ちゃんと同い年よ」
「じゃあ20歳か、若いねぇ」
呆然としてる男の子の代わりに答えればクスクスと形の良い薄い唇が笑い出す。
「ねぇ、訊きたいんだけどさ、ルルちゃんと俺の関係って何に見える?」
何を言いたいのかしらって見上げれば瞳を細めて立ち尽くしてる男の子を見つめてる。
自分に話しかけているんだと気づいたみたいで、え、その、とか言っているけれど言葉になってない。
人を困らえて面白がるのは昔から変わらないわね。
「俺達にはね、子供がいるんだよ。知ってた?」
しかも二人、って細くて綺麗な長い人差指と中指を突き出す。
え!?と驚かせちゃって、隠していたわけではないのだけれど・・・と言いつつも謝る。
隠していなくても言わないのは結局、隠していたと同じだと思ったから。
じゃあね、とアルバロが手を振る。
私もまた明日ね、と手を振って背を向けて歩き出す。
その後、息子と同年代を誑し込もうとしないでよって言われて、してないわよ!って膨れた。
私はアルバロだけを誑し込んだんだもの、って言い返す。
悪戯っぽい笑顔で。
すれば額に落ちる口づけは優しくて、胸が甘く蕩けるみたいになった。