せかんどらいふ!

□第四十一のフラグ
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心臓破裂未遂事件(宮地さんもっと自分の顔がいいこと自覚して事件)から1ヶ月ほどすぎた今は10月

虹村主将もだいぶ板についてきたと兄貴が言ってた
何故上から目線なのか気になるけども

帝光祭が終わり、クラスのみんなともさらに仲良くなったと思う

前より赤司さまに話しかけるのに遠慮がなくなったっていうか………まあ完全に遠慮がなくなるわけはないけど、それでも同級生として普通の距離感にはなったと思う

お母ちゃんは嬉しいです


今日は部活で写真のデータを整理してたら遅くなってしまって、珍しく私が最後。外を見るとかなり暗い

うわやらかした。早く帰ろ

パソコンを閉じ、帰り支度をして部室の鍵を締める
鍵を職員室に返したら先生早く帰れよと注意された。ごめんね先生

少し冷えてきたなあとぼんやり思いながら歩く

帰り道にあるストバスのコートになんとなく目を向ければ、バスケをしている影ではなく、ゴール下でうずくまる影が見えた

えっあれ大丈夫?!気分悪い?!?!………あれ、帝光の制服?………なんかこの光景、見たことある………よう、な

いやそんなの今はどうでもいい。本当に体調悪い人だったらまずい

コートに入って、ゴール下まで駆け寄る

「大丈夫ですか?!」

うずくまるその人に近寄ると、見覚えのある水色の髪が目に映る

「え、黒子くん…………?」

「海鳴、さん…………?」

顔を覗きこもうとしゃがんだ私と顔を上げた黒子の目が合った

彼の頬には涙が伝っていた

「ど、どうしたの……?」

突然のことで驚いて慌てながら、カバンの中に入れていたポケットティッシュを黒子に差し出す

「す、すみません……なんでもないです………」

「なんでもなくないじゃん…………とりあえずこっちで拭きなって………」

謝りながら涙を袖で拭おうとする黒子を止める

近くにあったベンチに座らせて落ち着くのを待つ
自販機でココアを買って渡す

「すみません」

「謝らなくていいって」

自分の分を開けて飲む………はーーー美味しい

自販機で買ってる最中に思い出したよこのシーン

バスケ部の昇格試験じゃんこれ………たしか萩原くんはベンチ入りしたし、尚且つこれさっき先生に退部勧められてきてるよな……………そら泣くわ。焦りとかいろんなものが襲ってくるわ

先生の方は善意なんだろうけどちょっと子供の気持ち考えてほしい腹立つ

ただこれ私あんまり何も言わない方がいいよなぁ………原作どおりに立ち直ってほしいっていうのもあるけど、私バスケ部じゃないし、うわべだけの励ましは悪手すぎる気がする

「………おちついた?」

「はい………すみません。みっともないところ見せてしまって」

「みっともなくないよ。気にしない気にしない」

うつむいて握った缶を見つめたまま顔を上げない黒子

「黒子くん、話した方が楽になるなら聞くよ」

「っ…………」

「まあこれといって為になる助言とかはできないけどねー」

黒子が気負わないように明るい声を出す

横を見ると先ほどと変わらない黒子の姿

悩んでるなあ、頑張ってるんだよなあまだ12歳だっていうのに

そう思っていたら手が思わず柔らかな髪を撫でていた

「海鳴さん………?」

「嫌?」

「嫌、ではないですけど」

少し戸惑うようなその返答に撫でる手は止めずに、ふふっと笑ってしまう

「黒子くん頑張ってるからね、良い子だなあって」

内心、半分オタクな部分が荒ぶってるけど、もう半分の大人な部分が穏やかな感情をつくってる状態

12歳、前世の私と10歳近く違うんだもんね。まだまだ子どもだよ。たまにはこうやって甘やかしたって良いでしょう

「僕は………頑張れているんでしょうか」

「黒子くんは頑張ってるよ」

黒子が頑張れていないなら、頑張るのハードルがガンガン上がっていくんだけど

「僕はもう…………やめた方がいいんでしょうか」

何を、と口をついて出そうになった言葉を飲み込み、撫でていた手を下ろす

気付いていることに気付かれている
まあこんなストバスでへたりこんでたら気付くわな

「私にはやめたくないって聞こえるけど」

グッと缶を握る黒子の手に力が入る

「周りの声っていうのは、自分の中で大きく聞こえると思う。でも、その人たちはこっちの人生に責任なんて持ってくれないよ」

私は立ち上がって黒子の前に立つと、見上げた彼の目に私が映る

「続けたいなら続ければ良い、やめたいならやめれば良い。それを決めるのは自分でなきゃ。自分の道は自分で、責任もって選ぶ方がいい。周りの声は参考程度。」

結局続けるのもやめるのも自分なんだから。何かを失うのも失わないのも自分

揺らぐ色素の薄い瞳を見て、柔らかな髪に手を置く

「迷うなら、同じことやってる人に相談してみたらいいんじゃないかな?」

君の周りにはいるでしょ

少し屈んで頭を撫でながら目を合わせる

黒子がまるで小さな子どものようで思わず笑ってしまう

「海鳴さんは………お姉さんみたいですね」

目を細めて柔らかく笑う黒子がとってもかわいい天使

うーん、やらかしてないよねこれ大丈夫だよね

「僕に姉がいたらこんな感じなのかなって、少し思いました」

かわいいんだよなあこの子!!!!

「私でよければいくらでもお姉さんと呼んでくれ………」

可愛さに頭を抱えながら少し照れたように、でも抵抗なく撫でられている黒子に母性が出ました
姉じゃないな

「少しすっきりしたような気がします。ありがとうございます」

「えっ本当に?マジでろくなこと言ってないけど」

「はい。………でもやっぱり僕は割りきれない、です」

「………そっか」

視線を逸らしてまた表情を暗くする彼は、かなり心をやられているような気がした

ずっと昇格できないならそうなるのも仕方ないのかも知れないなあ

あとは青峰にでも相談っていうか伝えれればいいんじゃないかな。黒子を受け入れてくれた初めてのキセキ

あとのことを考えると辛くはなるけど………それはまだ先の話だし

最初に黒子を受け入れてくれた青峰が、一番最初に黒子を突き放すのほんとつらい

今更ながらこんなつらいシナリオある???

…………変えようと思ったら、変えられる運命なんだろうか

いやいや、こんなこと考えるのはよそう

なるようにしかならないんだから


「すみません。話を聞いてくださってありがとうございました。話してみます」

「いいよいいよ。話聞くくらいいつでも言ってね」

丁寧にお辞儀をして帰路につく黒子を見送る

いやはや………私ってこんなに世話焼きだったかな…………

フラグに全速力で突っ込んでいく自分に呆れながら、私も家に向かってまたのんびりと歩き始めた
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