幽霊相談事務所

□私と老婆と青年と
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「此処での出来事は全て忘れろ。それから、二度とこの森には近付くんじゃない。……分かったな?」


「えっと―――」


私だって、本当は早くこんな場所から出たかった。都会に比べて随分と幽霊が現れるし、家は今にも崩れそうな程ボロいし、暗いし暑いし……良いことなんて無い。


しかし。


「でも、そういう訳にはいかなくて……」

「……何故だ?」


着替え終えたらしい青年がギシッ、とベッドに腰掛ける音がする。……もう振り向いても良いよね?



「私、森の中で行方が分からなくなった兄を探さないといけないんです。だからまだ、この森を離れる訳には……」



元はといえば。
お兄ちゃんに勉強を教えて貰う為、誰にも見られないような2人で勉強が出来そうな場所を探していたのだった。


実を言うと、" この物件には幽霊が出るという噂がある "と彩花が言っていた時はチャンスだと思った。余程の物好きでない限り、誰もそんな場所には近付かないだろうと考えたのだ。



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