幽霊相談事務所

□プロローグ
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「君が晴樹の妹だね……?」

思いに耽っていると、不意に若い男の人に声をかけられた。聞き覚えの無い声に私は恐る恐る振り向く。

短く切り揃えられた茶髪に灰色のスーツ、黒い眼鏡が良く似合っている誠実そうな男の人が背後に立っていた。

コクリと頷くと、男の人は屈んで、大きな手でそっと私の頭を撫でてくれた。

「名前は確か、" 美風ちゃん "だったけ? ……ははっ、流石は兄弟だね。目元が晴樹に本当そっくり──」

言いかけたその時、突然男の人の瞳が潤みだす。

ポタッ、ポタッ……とその涙は目から頬、顎へと伝い、どんどん床に染みを付けていく。

訳の分からない私を尻目に、男の人はサッと眼鏡を外し、ぐいっと自分の目元をスーツの袖で拭った。

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