幽霊相談事務所

□戸惑いと抗い
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「お前にとっては居るのが当然だろうが、世間でお前の兄はもう消えている存在。そんな者に助けを借りながらの生き方はいずれ通用しなくなる、これは自分でも分かってるだろ?」


「!? それは、」


「それと……身近な人間が幽霊であるお前には少し言いづらいんだが、本来幽霊は此処に居ない方が良い存在だということを改めて理解して欲しい」




突如始まったヒイラギ君の前触れに、私は軽く首を傾げる。




「そもそも、魂だけが現世に存在するというのはあまり良い状況じゃない。実体を持たない幽霊というのは、記憶と想いだけで成り立っているとても不安定で脆い存在……それ故に悪い影響を受けやすいし、姿も感情に左右されやすい」




幽霊は生きていた頃の記憶を頼りに姿を保っている。お兄ちゃんの姿が死んだ日のまま変わらないのは、どうやらそのせいらしい。

そして、怨霊の姿が少し人間離れしていたりするのも、怨みや憎しみで捻り曲がった感情をそのまま表現しているから。


そういう事なのだろうか。




「お兄ちゃんが不安定で脆い存在……」



私の知っているお兄ちゃんとは、いつも笑顔で穏やかで、強くてとても頼り甲斐がある人。

それは生きていた頃も死んだ後も変わりなく、今までそんな弱い印象を受けた事なんて一度もない。



「周りから強いと印象付けられている人間ほど、弱味を見せられない事もあるんだよ。お前の兄の場合、妹のお前に対してなら尚更な」



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