幽霊相談事務所
□夏の始まりと恐ろしい出会い
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『でもそれなら塾に通うとか、学校の先生に教えて貰えば済む話だろ?』
一見、見た目は良さそうに見えるその物件。チラシによれば家具一式も揃っているみたいだし、それにも関わらず家賃も安い。
しかし……その家を覆うように囲んでいる木々、植物、おまけに写真の端には狸が写っている。どう見ても普通に不動産で紹介されている物件とは違う。
わざわざこんな森の中に勉強しに行くメリットが分からない。
「だってお兄ちゃんの説明の方が分かりやすいんだもん……。うちクーラー壊れてるから家の中は暑いし、図書館だと回りの人居るからお兄ちゃんに勉強教えて貰えないし』
………へ?
「それに1度で良いから、こういう静かな所に遠出してみたかったから……」
『い、いや。そう言われる程俺教えるの得意じゃ――ちょっと待て、もしかして勉強が目的じゃなくて後者が1番の理由……?』
――そう言い終わらない内に、美風は恐ろしい程のスピードで俺の目の前まで迫りパァァンッッ!! と勢い良く両手を合わせてきた。