幽霊相談事務所
□幼い頃の夢
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夕暮れ時の公園―――。
ふぅ……と深く溜め息をつきながら、思い悩んだ様子で公園のベンチに腰掛けているおじさんが1人。白髪の混じった髪に長身で、銀縁眼鏡を掛けた真面目そうな人だ。
傍らには杖も置いてある。
「……」
私は足を止め、チラチラと目の前を飛んでいる蝶々とおじさんを交互に見る。
今の私には、先程まで追いかけていた蝶々よりおじさんの方に興味がある。
私はトテトテとベンチに歩み寄り、思いきってその人に声を掛けてみた。
「おじちゃん、こんな所でどうしたの?」
『――っ!?』
その人はバッと目を見開いて此方を振り向く。……そんなに驚かなくても良いのに。
「ねぇ知ってる? 溜め息を吐いたら直ぐに吸わないと幸せが逃げちゃうよ?」
『え? あ……』
私の問いに答えることなく、おじさんはポケットから取り出したハンカチで眼鏡を拭いては掛け直し拭いては掛け直し、珍獣でも見たような顔で私を凝視している。
そして一言。
『お嬢ちゃんには私の姿が視えるのか……』