上下関係元

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「クリン…クリン、クリン…」










―――――…



「優花っ!」


「あ、雫ちゃん!待ってたよ!」



今は学校の休み時間。
丁度5限目が終わり、6限目が始まる前だ。
その間に休み時間に、私は必ず4組の友達、
優花の所に行く。



「でねぇ、昨日動物の番組やっててさぁ!」


「っ!……」



動物……



「ダックスフンドが、おやつを貰いたくてするおねだりがね、とっても可愛かったんだ!」


「……そ、なんだ…」



思い出させないでよ…。
嫌だよ、クリン……

クリンとは、私が飼っていた犬の名前だ。
種類もミニチュアダックスフンド。

でも、つい2日前。
クリンはこの世を去った。

何故かはわからないけど、突然な心臓停止でなくなってしまった。

信じたくなかった。
クリンがこの世からいなくなるなんて、
思いたくもなかったし、
認めたくもなかった。

でも、事実なんだよね…。



「……っ!」



気がつけば、私は目から涙が溢れていた。

思い出したくない、
いつも傍にいたクリンが突然いなくなるなんて。

あんな悲しい、夜の日の事なんか。



「……え?、雫ちゃん、どうしたの?」


「…ごめんっ、優花」



そう言いながら、私は壁にもたれながらしゃがみ込んだ。

皆に見られない様に、ばれない様に顔を隠す。


クリン……クリン……クリン…



「雫ちゃん!、赤井先生がね、さっきの時間!」



私を泣きやまさせようと必死の優花。
ごめんね。…優花は何も関係なんてないのに…。

赤井先生とは、私の恋している相手。
きっと、先生の話をすれば、笑顔になると考えたのだろう。


……ありがとう。



「ん、ありがとう、優花」



無理やりに笑顔を作って見せた。



「ごめんね?…なんか、さ、…」


「どうしたの?」



心配して私の顔を覗き込んでくる優花。
その優しさに、また目に涙がうっすらと溜まった。



「うぅん…何にもないよっ…」


「そんな事ないはず…正直に言ってみて?
辛いんだったら、言わなくていいから」



優花の真っ直ぐな視線。
負けたよ、優花の真剣さに、
優花の優しさに。



「…実は、2日前の夜……ッうぅ…
クリンが……クリンっがぁ……」



泣いて先を話せない。
話したくない。
思い出したくない。

この記憶に、触れたくない。



「やっぱり、言わなくていい」



そう言って、優しく頭を撫でてくれる優花。
好きだよ、その優しさ。
ありがとう……それに、ごめんね?


その時



「黄架…どうかしたのか?」


「あ、赤井先生」



しゃがみ込んでる私を不思議に思ったのか
赤井先生がこっちに近寄ってきた。

先生に対応してくれている優花。
本当に、本当に助かるよ。
ありがとう。

ありがとう がいくらあっても
足りないくらい…。


キーンコーンカーンコーン...


あ、予鈴だ。



「黄架は俺に任せて。」


「はい、分かりました。じゃあ教室戻るね、雫」



声を出す気分じゃなかったので
頷くだけ頷くと、優花は教室へ帰って行った。



「よし……黄架、歩けるか?」


「……はい」



今は、動きたくない。
それが本音だった。

でも、先生に迷惑をかけれない。



「とにかく…保健室行こうか」


「大丈夫です…体調不良とかじゃないんで」



遠慮しながら立ち上がると先生は、
今は黄架から目を離したくない。
と真剣な眼差しでそう言った。

ドクン、と胸が高鳴りしたが、
先生の瞳に嘘はなかった。

だから、保健室に行くことに。








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