上下関係元

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それから教室に戻り帰る支度をした。
まだ授業は残っていたけど、保健の先生に吐きそうと伝えたら、優しい笑顔で帰っても構わないですよ。と言われたから、遠慮なく帰る事にした。

こんな気持ちで学校に居ても、楽しくない。
何も面白い事なんか感じられない。

先生に誤解されてしまった。
ちゃんと説明すればいいだけだろうけど、あんな後の先生は勿論、目も合わせてくれないで。

当たり前なのにね。
どうしてこんなに辛く、痛くなっちゃうんだろう。

頭では分かっているのに、心では理解できない。ホントに訳が分からない。


「井上先生いますか?」


約束通り、担任の先生に家まで送ってもらう。
保健の先生がちゃんと伝えていてくれたみたいで助かった。

担任は男の先生。車で送ってくれる。


「あ、はいはい。行こうか」

「すいません」

「全然いいよ。俺の大事な生徒だし」


どうして私は、井上先生に惚れなかったのだろう。こんなにも優しくて、分かってくれて、見た目も中身もいいのに、…どうして、担任にもなった事がない赤井先生に惚れてしまったんだろう。


「ありがとうございます」

「うん、じゃあ着いておいで」

「はい」


そして職員室から離れようとした時。


「井上先生!!!」


私達の後ろから声が聞こえた。
井上先生はそのまま振り返る。
そこに居たのは


「あぁ、どうしました?赤井先生」


先生、だった―。


「井上先生、この後授業あるんじゃないですか?」

「あぁ、ありますよ。でも少しくらいなら大丈夫です」

「駄目です!!代わりに俺が送って行きます!!」


・・・え?


「え、いいですよ。俺の生徒ですし」


何を、言ってるの?


「俺が良くないと思いますよ。」

「迷惑ですよ」

「違います。とにかく!!送って行きますんで、井上先生はここに居てください」

「えぇ…ホントにいいんですか?」

「はい」


井上先生は私に黄架もそれでいい?と聞いてきた。そんなの、嫌です。何か言えないでしょ?

てか、…何が目的で?


「行くぞ、黄架」

「え、ちょ、待って」


スタスタと歩いて行く先生の後に着いて行く。


車の鍵を開けてくれ、助手席へと乗り込む。
車の中は綺麗で、いい匂いがした。

先生も運転席へと乗り込み、エンジンをかけた。

先生、何考えてるんだろう。

そんな疑問が頭をよぎった。
だって、普通ならあんな事言われたのに、自分から進んで送る何か言わないでしょ?


「先生…」

「何」


やっぱり口調は冷たくて。
泣きそうになった。
でも、もう泣かない。


「どうして…?」

「……何が」

「どうして、こんな事するの?」

「こんな事?しない方が良かった?だったら降りろ」


何で、そんな事ばっか言うの?

また悲しくなった私は、泣いてしまった。


「え、何で泣くんだよ」

「もういい!!先生なんか嫌い!!」


そしてバタンと車から降りた。

もう知らない。本当に知らない。
好きだった期間がもったいない。返せ。
全部全部、返してよッ―。


「おい、黄架!!」


先生の叫びも無視をしてただ走った。


「待てって!!」


突然ガッ!!と引っ張られた腕。
バランスを崩し、思わず先生の胸へと飛び込む。

辺りを見回すと、門から出て少し行った所だった。先生も後から追いかけてきたのか、息切れをしていた。


「人の車に荷物置いて帰る気か?」

「どうして、追いかけてくるのっ?」

「何で泣いてんだよ」

「先生なんかに分かる訳ない!!!」

「だから、聞いてんだよ」


泣きじゃくる私とは正反対に、冷静な先生。
ムカつく。何なの?

でも、掴まれた腕に痛みと感触が残っている。
ドキドキと心拍数も上がる。
先生の胸に飛び込んでしまった時は、一瞬我を失った。

もう、訳が分からない。
今日1日、グチャグチャだ。




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