上下関係元
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「赤井先生、連れてきました」
もう、ホントにありえない。
最悪だ。バカ野郎。
そう思った。
だって、先生の顔、明らかに怒ってる。
「あ、ありがとうございます。スイマセンけど、ちょっと俺の代わりに授業しといてくれません?俺コイツと話してきます」
「分かりました」
…何で?
何で、そんなことするの?
藤井にはあんなに優しかったのに、どうして私にはそんなに厳しいの?
私の事なんか、どうでもいいからでしょ?
だから、そんなに今の機嫌を顔に出すんでしょ?怒った顔で私の前に立つんでしょ?
「で、どうして授業サボった?」
連れてこられたのは別室。
今は一対一で話す所。
「……」
「どうして黙る?」
駄目だ。泣いちゃいそう。
泣いちゃだめ。泣いちゃだめ。
そう思っていても、もう涙が溜まっていて。
「そ、れは…」
「体調が悪かった訳でもないんだろ?ならどうして?」
「……出たく、なかったから」
「……―っは?」
そりゃ、そうなるよね。
っは?ってなるよね。当たり前だよね。
「お前、ふざけてんのか?」
「ふざけてない」
「完璧ふざけてんだろ。授業バカにしてんのか?」
そこまで言う事ないじゃん。
成績落ちるのもバカになるのもこっちの問題で、先生なんかに迷惑掛からないじゃんか。
なのに、どうして?
何を想ってそんな事を言うの?
先生は私の何を分かっているの?
「してないもん!!」
「じゃあどんな理由でサボったんだよ。授業受けたくなかったのか?」
・・・先生、怖いょッ―。
「違うっ」
「面倒くさかった?」
「違うっ!!」
「じゃあどうして?」
「先生に会いたくなかったの!!!」
「……ぇ?」
責められ続けたから、ついつい言ってしまった。もう、気付いた時には遅くて。
「……っは、そうかよ」
「ぁ、今のは違ッ「違う事ないだろ」
「よーく分かったよ。お前の気持ちがな」
「先生、聞いてッ」
「だったらお前だけ別で受けろ」
それだけ言うと、ガタンと立ち上がり、別室を出ていった。苛立ったように扉をバンッ!!と閉めて。
どうして、聞いてくれないの?
私、間違えちゃった…。
言葉の順序が、間違えちゃったよ。
「……は、ははっ…」
可笑しくなって、笑えてきちゃった。
でも全くの逆に、目からは涙がボロボロ零れ落ちてきて。
「どッ…して?」
もう、泣いても泣ききれなくて。
枯れても無駄で。目から水を零す事さえ無駄なのに。
何で―?
伝わらないの?
伝わっちゃいけないの?
もう、頭の中がグチャグチャだよ…。
「赤井ッ……せんせ…」
好きなのに。
苦しいくらいに大好きなのに。
でも、全く伝わらなくて。
「辛いよ……」
私は別室で、ずっと泣いていた。
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