上下関係元

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「んじゃ、ここにa lot ofが当てはまるだろ?」


「あー!そういう事か!」


「ん。そーそ」


夏休み中の学校。
学校の中の空き教室。
そして今私は、…補習をしています。

英語のテストが赤点だったため、
先生と一対一の補習を受けているのです。

まぁ、赤点なのも、理由があるんだけど。
その理由は、恋。
つまり、先生に恋をしてしまってるのだ。
生徒の私が。


「ありがとうございます」


「おぅ。分かってくれたら嬉しいよ、教師としてな」


「ですね〜」


「超他人事だな」


はいよ。とアップルティーをくれた先生。
補習の楽しみはいっぱいある。

一対一に距離の近さ。
その上この休憩タイムに出てくるちょっとした飲み物やお菓子。

これが、私の好きな時間。


「チョコかアメ、どっち食う?」


「んぅ〜…そうだなぁ…」


先生の掌に乗せられた、一口サイズのアメとチョコ。

……悩む。


「…お前、いつまで悩むつもり?」


「だって〜!どっちも美味しいんだもん」


「それは分かるけどなぁ……はぁ。
もういっその事両方やるよ」


ん。 と私に突き出すように渡してくる先生を見て、ドキッとした。


「…いいんですか?先生の分…」


「俺は別にいーよ。」


「ホントですか!やった!」


アメにチョコ、2つとも貰っちゃったぁ。
嬉しいな〜。


「はい!そうと決まれば補習補習!」


「うげぇ〜もう〜?」


「もう〜?じゃないだろ。ほら、さっさとやんぞ」


ウダウダ言う私をよそに、先生は淡々と補習を始めていく。
……悪魔め。






それから30分が経った。
補習って結構するんだな。


「せんせぇ…」


「何だ?」


やるのめんどくさい。
みたいな顔でいると、先生はそれを察知したのか、はぁぁ と深いため息をついて、言った。


「今回は終わるか」


「…ホント?」


嬉しいけど、ヤダ。
先生とバイバイだなんて。
ずっとこのまま一緒に居たい。
……そんなの、叶うわけないよね。
バカだ、私。


「あぁ。終わりたいんだろ?じゃあいいじゃん」


「……やだよ」


「あぁ?」


聞こえるか聞こえないかの小さい声で言ったつもりだったのだが…
先生の耳にはちゃんと届いていたようで。


「もう終わり?」


「もうって」


「どうして?」


質問攻めに困っている先生。
ちょっと、可哀想だ。

だから仕方なく、私は椅子から立ち上がり、
ごめんなさい と一礼をして教室を出ようと歩いた。

その時


「ッ、待てよ!」


「っっ!」


いきなり手首に温もりが。
パッと後ろを振り向くと、先生の手が私の手首をガッチリと握っていた。

ドクン・・・


「何だよ、それ。意味わかんねぇ」


「え、だって」


「お前、自分勝手過ぎんだろ」


…心に傷をつけられた。
そうだよ。そんな事、とっくに知ってる。
自分が一番知ってるよ。
でも、治せないから…苦労してるんじゃん。


「離して」


「いや。絶対に離してやんね」


「先生っ」


ドキドキする。
ある訳ないのに、先生のその一言一言に。

私が好きじゃないのなら、
そんな行動しないで。
そんな言葉かけないで…。

どんどん先生に溺れていくし、
どんどん辛くなってくだけだもん…。


「離してよ……」


「えっ、何で泣くんだよ」


「バカッ、全部先生のせいじゃん…」


「…え?」


「先生はさ、全く知らないんだよ…。
全く気付いてないんだよ…私の気持ちに。」


私が泣きながらそう言うと、ずっと握っていた手が離れた。
…やっぱり、そのレベルじゃん…。

すると、先生も話しだした。


「お前だって、黄架だって、全く知らないだろ。俺の気持ち」


「…ぇ?」


先生の…気持ち?


「ずっとずっと我慢してきた。
教師と生徒だから、駄目だって。ずっと黙ってた。でも、もう無理だ。」


何、を……言ってるの?


「もう、無理なんだ、黄架」


「何がッ……ッ!!」


突然先生に力強く抱きしめられた。
ガッチリとした、この腕に。
ずっと憧れていた……この身体に。


「許してくれ……こんな俺を…」


「だから、ッ何が」


「好きだ。雫」


ドクンッ…


フと何かが唇に触れた。
それは、…先生の唇。

ドキドキが止まらない。
先生が、…私を?
そんな、こんな話って…本当にあるの?


「……悪い、つい」


「え、、あ、いや///えっと、その」


「ははっ、動揺しすぎ」


「わ、私も、好きです。ずっとずっと」


「……マジ?つか、知ってた」


顔が真っ赤な私を面白がる先生。
こんなことも、幸せなんだろうな。

先生、ずっと想ってました。
だから、今回のテストも、前回のテストも、
“英語だけ”赤点をわざと取っちゃったんです。
好きな人のためなら、
……恋なら女は、…なんでもしちゃいますからね。





-END
2012.3.2

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