上下関係元

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「綺麗ですね…」


「あぁ、そうですね」



都会の中の田舎辺りに今、
私は大好きな先生と2人でいる。


その理由は。

私がさっき、
庭でガーデニングをしていた時に、
たまたま車で私の家の前を通った先生が、声をかけてくれた。



「何してるんですか?黄架」


「あ、赤井先生」



声のした方を向くと、
車の窓からヒョイと顔を出して、
すご〜く不思議そうに私を見ている先生がいた。



「ガーデニングです。…最近植物達をほったらかしにしていたので…」


「ほぉ…ガーデニングですか」



いいですね。 と言って笑うと
車からバタンと降りてきた。
スタスタと歩き、門を開けて庭に入ってくる。



「この植物…全部黄架が?」


「ぁ、はい。私の趣味でやっているんで」


「へぇ…いい趣味してるんですね」


「まぁ、何かを観察する事が好きなので」



ニッと優しく微笑む先生に、軽く胸が鳴った。

薄暗い夜に先生とたまたま出会い、
そして2人でお話をしている。

不思議だな…。



「黄架ってさ…こういうの好きなんだよな?」


「はい、大好きです」


「じゃあさ、俺の知ってる秘密の場所…行きませんか?」


「えっ…いいんですか?」


「勿論。…一緒に」



スッと手を差し出され、
綺麗にほほ笑むと、行きましょう と一言。
はい と言ってその手を握る。

冬の寒い夜にも関わらず、先生の手は暖かかった。



「先生…手、あったかいですね」


「そうですか?…じゃあ、心が冷たいかも、ですね」



笑いながら言う。
無邪気な笑顔。でも、綺麗な笑顔。

先生の車の助手席に乗り込むと、
私が乗った事を確認して、車が出発した。

だんだんと家から離れていく。
遠く…遠くに。



「何処行くんですか?」


「んー、都会の中の田舎ですかね」


「何ですかソレ、笑」



2人で笑いあうと、また静かになる。

ドンドン車は山道に入って行った。
少し不安になり俯くと、それに気付いたのか。

先生が優しく 大丈夫ですよ と言い、
頭をそっと撫でてくれた。

先生の大きな手が触れると、不覚にも安心する。

先生が、好きだからであろう。



しばらく走ると、周りはすっかり山。
木々がいっぱい立ってあり、車から一歩出ると、ものすごく寒かった。



「黄架、何か飲みたいものあるか?」


「あ、暖かい物がいいです」


「ん、分かった。外は寒いから、少しだけ待っててください」



そう言うと、車から降りてすぐそこの自販機まで歩いてった。

優しいな、先生。
いつか先生にも、一生守り抜きたくなる大切な人が、…現れるんだろうな。

そう思うと少し悲しくなる。

シュンと落ち込んでいると、いつの間にか帰ってきた先生が



「ホラッ」


「キャッ」



暖かいホットレモンを
私のホッペにつけてきた。

ビクッと身体が飛び跳ねる。
それを見た先生は、ハハッと笑うと再び車に乗り込み、車を走らせた。



「もう見えてきますよ…」


「本当ですか!」


「テンション上がりますねぇ、笑」



そりゃ、上がりますよ!
自分が興味ある事ですもん。

それから5分ぐらい車を走らせた。
言葉通り、もう見えていた。







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