甘やかしたがりの大学生
□小山内くんの日常
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「柚希(ゆずき)ちゃん、こんにちはー。
お邪魔してまぁす」
学校が終わり、玄関を開けると聞こえてくる彼の声。
リビングへ行くと、ふにゃりと笑う顔がある。
決して、我が家の住人ではない。
「なんでまた居るの」
「柚希ちゃんに会いたくて」
なんてふざけたことをサラリと言う彼は、お兄ちゃんの友達の小山内くん。
下の名前は、忘れた。
はちみつ色でちょっとウェーブがかかった髪に、英国紳士を彷彿させる甘いフェイス。
女の子は引っ掛け放題だろうに。
…何故か2か月前から付きまとわれている。
「もう来ないでって言ってあるよね」
「柚希ちゃん冷たーい」
「私あなたみたいな馬鹿丸出しの人、好きくないんです。
さっさと失せてください。目障りです。」
「辛辣だねぇ」
この人は、お兄ちゃんの客のハズ。
どうして私に絡んでくるのか。
「馬鹿兄貴っ」
「お兄ちゃんには椎(しい)を止める勇気はありません…」
「役立たずっ」
「いいねぇ、萌えるねぇ」
誰かこの人を抹殺してくれ。
この家は、今はお兄ちゃんと私の二人暮らし。
パパとママはローマで仕事をしている。
つまり、最後の砦はお兄ちゃんな訳だ。
だが、そのストッパーが当てにならない。
それはもう、ものすごく。