あやかし狐のお姫様

□あやかし狐と初夜もどき
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「まお〜っ」


スリスリとすり寄ってくるひぃちゃん。

可愛い〜っ。

思わずよしよしと頭を撫でると、ぎゅ〜っと私を抱きしめる力が強くなる。

ホント可愛いっ!!

私はお兄ちゃんが一人いるだけだから、下に妹か弟が欲しかったんだよね〜。


「夜風に当たってくる」


ベッドの上を転げまわる私たちに呆れた視線を寄越して、白露が言った。


「まだ寒くないですか? 外」

「別に」


部屋に来るなり本性に戻った白露の髪は銀色。

月明かりに照らされるその姿は、まるで故郷を思うかぐや姫。

…って私、夢見過ぎ?

普通にイタいよね、こんな高校生。

妄想にトリップしていると、ひぃちゃんから急かされて現実へと戻る。


「まお、寝よ〜?」

「あ、うん」


白露は…そのままでいいのかな?

一向に部屋に戻ってこようとしない彼。

まぁ、まだ行ったばっかりなんだけど…。


一応部屋の足元を照らす間接照明だけを残し、真っ暗にする。


「ふふ〜〜っ」


私と同じベッドに入って御満悦なひぃちゃん。

ところで…ひぃちゃんって、"誰"なんだろうか?


「ひぃちゃんのママとパパって、誰なの?」

「……ぃゃ」


十二分に間を取って、ひぃちゃんが拒絶の言葉を発した。


「え?」

「嫌。言いたくない。」

「そっかぁ…」


じゃあ、深くは聞かない方がいいのかな。

白露が何も言わないってか、むしろ連れてくるくらいだから、私たちに仇を成す存在ではないのだろう。


「ごめんね、嫌なこと聞いちゃって」

「ぅぅん」


目に見えて落ちこんだひぃちゃんに、掛ける言葉もなく…。

私はただ『おやすみ』とだけ言った。
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