あやかし狐のお姫様
□あやかし狐の一目惚れ
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=10年前=
「わぁ、見て見て!!
きれいなけしき〜」
家族旅行で訪れた京都は、まるで異世界。
綺麗に着飾った舞妓さんが歩いていたり、お寺に繋がる道では古民家のようなお土産屋さんが軒を連ねていたり。
日常から切り離されているように感じた。
その中でも私の興味は専ら(もっぱら)景色。
脇にあるお土産屋さんには目もくれず、お寺の舞台から見える景色に心奪われていた。
お母さんとお父さんは少し離れた所で写真を撮っている。
私はふと、この舞台の真下はどうなっているのか気になって身を乗り出す。
「んぅ〜、もうちょっと…」
頑張って背伸びをして、柵によじ登ったその時、私はドン、と誰かに押されて…。
キャァァァという悲鳴の中、真っ逆さまに落ちて行った。
「全く。危なっかしい娘だ」
真っ逆さまに落ちるのだ、痛いに違いない、と身を強張らせ目を固く瞑る私の耳に響いたのは、私と同じくらいの年齢の男の子の声。
それも、とてつもなく偉そうな。
「ほぇ…?」
目を開けると、私は男の子に腕を掴まれながら空中に浮いていた。
その男の子の格好は、私が見たこともないような服。
…どこかで見たことがあるのうな…。
"ひゃくにんいっしゅ"かなぁ??
布が多くて、動きにくそう…。
「まだ居(お)ったのだな、悪戯好きな雑鬼どもめ」
彼の視線を追うと、その先には一匹の鬼。
頭にちょこんとツノが乗っている。
ギラリ、と彼が睨むと震えあがる鬼。
…様子がおかしい。
プルプルと震え、千切れんばかりに左右に頭を振っている。
「ちがう。あの子じゃない」
「は?」
言葉を発した私に驚いたのか、怪訝な顔をする彼。