小説

□ちおめゆ
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「舞美ちゃん?」



「ん〜?」



「退屈な未来って、楽しいのかな。」



「……へ!?」



自分でもとんちんかんな質問をしたと思う。



でも、こうやって舞美ちゃんと一緒にいて、ずっと一緒にいて…それは楽しいのかな、って思う。



この先が見えないのは楽しい。 全然舞美ちゃんが嫌いなわけでも、愛想をつかしたとか言うわけではないけど…。



…明日どうなるのかさえわからない、そんな毎日が今はすごく楽しい。



よくわからない今は楽しいけど、いつか明日が見え始めたら、つまんなくなってしまうのかな……?



そんな小さくて意味のわからない質問をぶつけてみた。



でも、わかるわけがない。だれでも。 未来を生きる人くらいしか…わかるはずは…



「愛理?」



あぁ…なんか、とても眠い…舞美ちゃんの声が遠くなる……。



ごめん、おやすみ、舞美ちゃん。



* * * * *



「あ、起きた?」



朝の第一声は、いつもの舞美ちゃんの声より少し低めな、落ち着いた声だった。



朝の光に照らされたその人は、舞美ちゃんからかわいいところをとって美しさをプラスしたような女性だった。



短くて真っ黒だった髪が、切る前みたく長くなっていて、少しだけ茶色みを帯びさせたらこんな感じだろうなって言う髪。



「おはよ、愛理。 顔洗ってくれば?」



「う、うん。」



誰だろう…舞美ちゃんのお母さん?にしては若すぎる気もする。



鏡を見る限りじゃ私の顔は変わっていない。



半信半疑のまま顔を洗い終える頃、いい匂いが漂ってきた。



「これ…作ったんですか?」



プロの料理人さんだって負けちゃいそうなくらい美味しそうな朝食。



家の家庭はパパのおかげで少し裕福だけど、今まで見たどんな朝御飯より豪華だった。



「ん〜、まぁゆっくり食べながら、と思いながらね。



座って?」



「う、うん。」



やっぱり舞美ちゃんじゃない。 舞美ちゃんは結構料理は得意ではないことを私は知っていた。



そんな思いからビクビクしていたのか、その人に笑われた。



「毒なんて入ってないよ。 愛理。 安心して?」



笑うときに、微妙に上唇がめくれた。 その笑顔は確かに私の好きな舞美ちゃんだ。



ますますわからない。 どうゆうことなんだろう…?



取り合えず食べ始めるとおいしくて、夢中で食べてしまった。



「ンフー…これもおいしい。 あ、これも!」



「よかった、遠慮しないでね。」



「うん!」



食べ始めてから大体三十分くらいであらかた食べてしまったみたい。



おいしい紅茶をいただきながら、その人は話始めた。



「じゃあ…いきなりだけど、私は誰だと思う?」



誰だとって……でも大体選択肢は限られてる気がする。



「舞美、ちゃん?」



「流石だね。 状況判断が早くて助かるよ。」



紅茶を軽くすすると、また話を続け出す舞美ちゃん(らしい人)



「じゃあ今から結構ぶっ飛んだ話するからね?



愛理は頭のいい子だけど、それでも柔らかくして考えて?」



ピクリと私のカップを持つ手が止まる。



「私は……五年後。つまり、二十四の矢島舞美。」



「ご、五年後?」



「うん。」



ビックリした。 たったの五年で舞美ちゃんはここまでキレイになるんだ。



「で、何で五年後の私が急にここに来たかと言うと、五年後のあなたが私に五年前の質問覚えてる?って聞いてきたから。」



「質問……あ。」



「退屈な未来って、楽しいのかな、だっけ?



その質問に答えてあげる。」



「え!?」



「て言うか正確には、二人でその答えを探していこうってなったんだ。



で、その答えあわせをしようってなったときに五年前の私と入れ替わった……



ってことだと思う。」



「入れ替わり…ってことは?」



「多分五年後のあなたは今五年前の私と話してる。



だから、答えを知りたいだろうし教えてあげる。」



夢みたいだ。 言ってしまえばタイムトラベル。



あの時のあんな質問を五年も考えてくれた答え。



すごく興味はある


でも



「それじゃあ…すごく失礼ですけど、その〜なにも言わないで帰ってください。」



「うん。 ってえ!?」



びっくりしてる舞美ちゃん。 だって……



「私は、五年前の舞美ちゃんと私がしたみたいにしたいです。



だから…五年。 私たちにください。」



探したい、結果同じ答えになったとしても、舞美ちゃんと一緒に五年を過ごして、聞いただけじゃない…自分で考えた答えを。



たがら……っ



「とか言って。」



「は、え!?」



「ふふ、そんなわけないでしょ。 いきなりごめんね、ちおめゆって逆から読んでみて?」



「夢…お、ち?」



その瞬間、世界が弾けて消えた。



* * * * *



目が覚めると、私の部屋、なにも変わらない私の家。



「あ、起きた?」



顔をあげると、可愛らしさが残る顔があった。



「なんか愛理疲れてる? 夢のなかでおいしいものでも食べてた?」



ハイってなんかのカップを渡された。



それは、五年後のあなたの紅茶に比べると、少し渋めの紅茶だった。



さっきの夢は意味がわからなかった。 でもとっても重要な夢だったと思う。



だって……



「ね、舞美ちゃん。 今から五年間でさっきの質問の答え、考えてみない――?」


あなたと過ごすこの先が、とても楽しいものに見え出してきたから…。



FIN
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