小説
□ある風の日のお話
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今日みたいに、風の強い日は好きじゃない。
カタカタ揺れる窓に小さくため息をついて、昨日までのことを思い出す。
……舞美ちゃん、元気なかったなぁ…。
原因は…何となくわかる。最近一緒にいれないから、寂しいよ。 泣きそうな目で訴えてた。
言葉にしてくれない理由は、きっと私と同じ。
張りつめてる感情が切れてしまう。 どうにもならない今が嫌で、誰にも文句は言えなくて、それでも相手が好きで。
グルグルドロドロした何かが、言葉を出すと糸が切れ同時に涙もついてきてしまう。
だけど、泣いてもいいんだよ、って言ってほしいのは相手も同じで……結局お互い何も言えなくなるんだ。
そんな日々が今日で大体一ヶ月。 舞美ちゃんならまたあいり〜って笑顔で来てくれる。 そんな甘えがあの舞美ちゃんをあそこまで追い詰めてしまった。
心に浮かぶのは後悔と、それでも捨てきれない弱い考え。
時間が何とかしてくれるよ……どうしようもないことなんてわかってるのに。
―私たち、これで終わるのかな……―
そんな最悪な考えが浮かんできた、そんな瞬間だった。
♪〜〜♪
大好きなあなたからの着信音、慌てて押した通話ボタン。
『あ…もしもし…愛理?』
「舞美ちゃぁん…グス」
たった一言、繋がったそれだけで嬉しくて。
『ちょ……どうしっ…
私のせい、だよね……ごめん!!』
「ち、ちがっ!」
ほら、こんな私にこんなに優しさをくれる。 力一杯、まっすぐに謝ってくれる。
ガタン!! と窓が揺れるほど大きい風が吹いた。
何してんだ!!そんな弱気な今までの私の考えを吹き飛ばすみたいに。
もう、迷う必要なんてない。 伝えよう。私も
「舞美ちゃん……大好き。今まで…ごめん。」
よかった、伝えられた…!!
『クシュン! え、何!?』
……え? 嘘でしょ?
「え? 舞美ちゃん!?」
『ごめん、花粉症で辛くて。 もう一回お願い。』
ち、ちょっと!!
ヤバイ。 なんかが切れた。
「何してんのさ!! 大体私だって花粉症だよ!
なんで? 家の中にいるのに、なんで花粉症影響きてんのさ!!」
『わぁぁごめん! で、でも窓の外見て、カーテン!!』
文法が倒置法って言うのにはちょっと雑だよ。
カーテンって……。
それでも、期待を胸に開けてみると…。
公園の中心でブンブン手を振ってる…あれは間違いない。
ドタドタと下に降りてコートを羽織って、外に駆け出す。
「はっ…はっ…舞、美ちゃん……」
「愛理…!!」
外灯が壊れてて、辺りが暗い。 風のせいで、近づいても舞美ちゃんが何いってるのかよくわからない。
それでも
私の中のドロドロした感情は、小さく消えた。
冷たい辺りで私はとても暖かい。
「……き!!」
さっきは伝わらなかった言葉は、今度は
「ありがとう。」
風のなかでも、ちゃんと、
伝わった
FIN