Short

□お願いだから
1ページ/2ページ


今日任務から帰ったら大切な話があると名前に言われた。
大体予想は出来る。
だってあいつの顔が真っ赤だったからなぁ゛。
怒った赤じゃなくて、照れた赤だ。
だから、俺もあいつに帰ってきたら大切な話があるって返してやった。
そしたら名前は少し驚いた顔をして直ぐに笑って、行ってきますと言った。

そして、彼女は帰ってこなかった。



その晩、どう考えてもいつもより遅い任務からの帰宅に少し不安と苛立ちが入り混じっていた。
彼女の言った任務はBランクで大したものでは無かったはずだ。
しかも、そのランクの割に幹部のべルまでつけたものであるから、直ぐに帰ってくると思っていたのだ。
しかし、彼らが帰ってきたのは深夜二時だった。
いつになく、慌てるベルの声がアジトの廊下に響く。
早く、医療班をという声が聞こえ玄関に向かうと血だらけのベルが滑り落ちるように壁にもたれかかって座っていた。

「う゛お゛ぉい、誰の血だ?名前はどこだぁ゛?」

「・・・・・・・・」

「う゛お゛ぃ・・・・・・まさか」

言い終わるが早いか、ベルに聞くのをやめ医療班の活動する部屋まで走った。
お願いだ、生きててくれ。
まだお前に伝えてないことがたくさんあるんだ。
俺の質問に対するお前の答えは知ってる。
でも、まだお前の・・・名前の口からは聞いちゃいないじゃないか。
俺は、名前口から直接聞きたいんだ。
なんてわがままかもしれない。それでも名前じゃなきゃいけないんだ。
すき。ただそれだけでいい。お前の声で何度も聞きたい。毎日だって聞きたい。名前意外なんて俺には考えられない。もう名前なしじゃ生きていけそうにないんだ。
だから・・・・
だから、このまま俺をひとりにしないでくれ。


勢いよく名前の居る部屋に飛び込み、彼女を見た。
彼女には最低限の機械やチューブしか繋がれていなかった。
医療班の医師曰くもう、どんな最新技術をもってしても彼女はもう数時間でダメらしい。

う゛お゛ぉい…どういうことだよ。
なんでお前はそんなに早く消えてしまうんだ?
俺が捕まえた途端消えるなんて可笑しいだろう

白いベットの脇に座ると
目をうっすらと開けた彼女が残りの力で俺に話しかける。
耳を澄ませて聞いてやれば、昨日の様に笑って眠るようにして彼女は目を閉じた。

目から一つの粒が頬をつたって転がり落ちた。
一粒が二粒になって、どんどんあたらしい粒が流れ落ちる。
もう、その粒は止まらない。
好きだ、好きだ、好きだ、好きだ、好きだ、好きだ、好きだ、すきだ・・・・・
こんなに愛おしいのに。離れたくないのに。
もう、明日の朝におはようと言ってくれる君は居ない。


「・・・愛してる、名前」

もう届かない言葉を君に。
ありがとう、さようなら。
そして、少しずつ冷たくなる君の唇にそっとキスを落とした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ