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□エイプリルフール
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俺の部屋なのにこいつはいつも俺の部屋にいる。
ある時はゲームをしてて、ある時はベットで寝てる。またある時はシャワーを浴びていた。
流石にスクも一緒に入る?と聞かれた時は断ったが、
取りあえず、女としてはもう少し恥じらいをもってほしいと思うのもあってだな、
・・・というか、もしかすると俺は男として見てもらえてないのかぁ・・・?くそぉ゛・・・気になる。
あ゛ぁー・・・、まぁ、要するに何だかんだで俺は名前のことが好きだ。
こいつがどう思ってるかは別として俺は名前との時間は結構・・いや、かなり好きだ。
まぁ、好きでなきゃ今頃放り出しているがなぁ゛。

そして今日は新調したばかりの柔らかいソファーに埋もれながら机にお菓子を広げていやがる名前。
う゛お゛ぉい・・・。寛ぎすぎじゃねぇか?
まぁ、いつものことだが。

「う゛お゛ぉい、お前、これ一人で食うのかぁ?」

取りあえず、一人では気持ち悪くなりそうなぐらいのお菓子を前に俺もソファーに座る。

「え?何言ってんのスク。君も食べるんだよ」
「は?俺はこんなに甘ったるいもん食わねぇぞぉ」

と、いいつつ俺はそこまで甘くなさそうなお菓子をてきとうに探す。
お菓子よりも甘いのは俺かもしれない。とアホ丸出しな思考を端にクラッカーを見つけ口に入れる。

「あ、そのクラッカーねぇ〜」

ニコニコしながら楽しそうに話す名前にドキッとしながら話を聞く。
もしかして名前が作ったのか?
そういやおいしいしなぁ゛。

「ルッス姐がつくったんだよ〜」

撤回。
むせた。
あいつがルンルンウフフン♪いいながら作るのを想像するだけで気持ち悪い。


「やっぱり、甘いもんはきらいだぁっ!!」

「えぇ〜私はスクのこと好きだよ〜」

静止。否、停止。
突然の事に頭が回らず俺の手は必然的に機能を失い、持っていたクラッカーは手をすり抜け落下した。
多分今の俺の顔に音をつけるなら”ぽかん”が一番いいだろう。
・・・は?
すまん、おれが聞き間違えたのだろうか。ついに俺も自分にいいような幻聴が聞こえるようになったのだろうか。
いや、きっとこいつのことだ。甘いものが好きだといいたかったんだろう、きっとそうだぁ!←
現に何の変哲もなく大量のお菓子を気持ち悪がらずに食べるコイツを見る限りだと言い間違いかなんかだと思った。

「何やってるの?スク。クラッカー落ちたよ」

「ぉ、おう゛」

「それにしても、スク、返事してくれないの?」

「う゛ぉっ?な、なんのことだぁ?」

「私がスクのこと好きってことに対しての返事」

またもや停止。
うそじゃない・・・のかぁ゛?
ほっぺを引っ張る。もちろんおれのじゃない名前のだが。
「いたたっ!!なにすんのさ!」
痛がるって事は幻聴でもなく本当らしい。
(名前はこれが返事?とかあほなこと言ってやがるがそれは無視だ。)

「ほ、本当なのかぁ゛…?」

「え?嘘だけど」


「…う゛お゛ぉいっ!!」

酷くねぇかぁ゛…?仮にでもこっちは名前のことが好きなんだぞぉっ!!(泣)
まぁ、こいつに言っても「フーン」で済まされそうで、
どちらにしても俺が辛いのが目に見えてるからそれは口にしないがなぁ゛・・・。
なんて俺がウジウジ考えている間にあの大量のお菓子を食べ終えた名前はソファーから立ち上がった。
食べ散らかしたものを片づけ、スカートについたゴミを掃うとドアの方へ歩き出した。
どうやら部屋に戻るらしい。
俺はと言うとその姿を一部始終見つめ、ショックからボケーっとしていた。


「あのさ、」


開けたドアの前で、サッと振り向いた彼女。



「・・・さっきの嘘、嘘だからっ」



と、赤い顔して言われた。
意味がわからず「…あ゛?」と言ったら返ってきたのは強く閉められたドアの音と走り去る音。
バンッというドアの音と共にようやく意味を理解した俺は、
さっき大きな音を立てたそれを勢いよく開き名前を追いかけた。





嘘のウソ



だって、今日はエイプリルフール,でしょ?

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