あなたとわたし

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ねぇ!!いやだよっ!
まって!お願いだから・・・

お願いだから私を一人にしないでっ・・・・・!!


「はぁっ、はぁ・・ゆ、め・・・?」
バサリッと音がしそうな程勢いよく起きると
背中をつたう冷たく気持ちの悪い汗がつぅーっと流れた。
・・・嫌な夢。
月曜日だというのに、週の始まりから悪夢で目覚めてしまった。


自分でもそのおかげかとは言っちゃなんだが、
いつも遅刻しそうな私が今日は余裕をもって登校出来た。
外に出れば暖かい日差しを感じ、まだ少し寒さを残した風が私の髪を揺らした。

「もう、春・・かぁ」

今年で中学3回目の春を迎える私。まぁ、一般的には受験生だ。
難義な事に自分自身にその自覚がないのは何とも言えない。
まわりは志望校はどうするだの、将来は何になるのだの
耳にタコが出来るんじゃないかってぐらい煩いけど、
将来、将来ってそんなことわかんないっつーの!
と、心の中で悪態をついていたらいつの間にか学校についていた。

取りあえずボサっと窓際の一番後ろにある自席に付けば、
タイミング良く朝の部活を終えた友達が教室に入ってきて
名前が学校に間に合うなんて珍しいこともあるもんだね、なんて言うから失礼しちゃう。
じゃぁ、もしかしたら何か起きるかもよ!とかニヤニヤしながら言ってくるもんだから
こっちも無い無いって冗談で言い返してやった。
そしたら何とも不思議な事に転校生がやってきた。
ほらね、やっぱり。という自慢げな表情の友達にちょっとイラッとしたけど、
友達の言うことが当たったもんだから内心結構驚いていた。
驚きついでに言えば、その転校生は名前も眼も、何より髪型も特徴的で驚いた。

「六道には苗字の隣に座ってもらう。苗字、教えてやれ」

「あ、はい、ここです」

「今日から隣になった六道骸です。よろしくおねがいします」

律儀に挨拶をしてくれた六道さんの笑顔が素敵なもんだから
こちらこそっていうのに思わず声が上ずってしまった。
きっと、普通の女の子はさっきの笑顔でイチコロだろう、
と我ながら冷めた思考で判断していると早速隣の六道さんが話しかけてきた。

「あの、すみません・・・教科書見せてもらえませんか?」

すると突然の質問に私が頭に疑問符を浮かべているとそれがわかったようで、
唐突な転校の決定で教科書がまだ手元に届かなかったと説明してくれた。
取りあえず、私も教科書は必要なので机をくっつけ教科書を真ん中に置いた。

ありがとうございます、と耳元でテノールが響き、驚き横を見れば、顔近っっっ!!
授業中にも関わらずおもわず「うへっ!!」っと奇声を上げた私は先生に「うるさい」と注意されてしまった。
その一連の動作を見てクフフと横で笑う六道さん。
いや、今のは断じて私は悪くない、悪いのは絶対六道さんだ!

「ちょっと、怒られちゃったじゃないですか」
「おや、僕のせいですか?」
「そりゃそうでしょ!六道さんが耳元で話すからっ!!」

周りからも注目され、恥ずかしさで真っ赤になって話す私と対照的に
それはすみませんね。と、また耳元で言ってくるもんだからたまったもんじゃない!
・・反省してないじゃん!!と心の中でツッコミつつ、未だ口を押さえてクフクフ笑う六道さんをキッと睨んだ。

「もう!教科書見してあげない」
「おやおや、それは困りましたね」
「じゃぁ、私と反対側の子に見せてもらって下さい」
「そうですか、つれませんねぇ」
「いや、つれるつれないじゃなくて、私の心臓が持たないから!」
「クフフ、それは僕が好きということですか?」
「・・・はぁぁ」

おや、違うんですか?僕は結構貴女のこと気に入ってますよ。なんて真面目に聞いてくる六道さんに溜息をついた。
とりあえず、この人は頭が可笑しいみたいだ。
うん。そうだ。
このままこの人のペースに持っていかれては危険だと理解した私は自分のペース取り戻すため単刀直入に気になることを質問してみた。

「六道さん。」
「はい。なんですか」
「六道さんって、・・・・・・・・・・・変態?」
「クフフ、面白いことを言いますね」
「あ、否定はしないんですね」
「否定してほしかったんですか?」

そりゃーな!


と盛大に心の中でツッコミ私は六道さんのどうでもいい素直さに少し呆れた。
しかも、地味に私はこの隣の席の変態に少なかれ好かれてしまったようだ。
ふむ、明日からこの変態をどうしたものか・・・

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