短編

□おわりの
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洞窟。
湿っぽくて暗くて、私は大嫌い。
特にここは、もっと嫌い。
ルーモスで先を照らして歩く。

私は亡者に勝たなきゃいけない。
勝って、連れ戻すのだ、レギュラスを。

クリーチャーからレギュラスの居場所を聞くのは少々大変だった。
追いかけ回し防音魔法をかけても頑なに居場所を教えてくれなかった。
だが、私はしつこい。(良くいうと諦めが悪い)
だから、ずっと聞き続けた。防音魔法も使い慣れちゃって無言魔法できるんじゃないかってくらい、慣れた。
しつこいが面倒くさがりやな私はすぐ諦めると思われていたようで、少し呆れたような顔をされた…気がする。

「レギュラス!どこにいるの!」

私は叫ぶ。この洞窟に、レギュラスがいるはずだ。
レギュラスレギュラスレギュラス、頭がおかしくなりそうなくらいレギュラスの名前を叫ぶ。

―こないで下さい!

「…!レギュラス!」

私は強くなったの、私は闇のなんたらを消せるようになれた、だから私は、大丈夫、貴方を、

ダメです、なまえ…!
「嫌だ、絶対!」

首をふりながら私は走りながら声の方に進む。
奥に進むと掠れて小さかったレギュラスの声が、雑音に混ざって聞こえて来る。

湖、だ。
湖にレギュラスがいる。
私にはわかる、だって、レギュラスが、このせかいで一番、

「レギュラス!」
杖を右手で高く持ち、さぶり、冷たい水に身震いする。

足に纏わり付くような、この水が鬱陶しくて仕方がなかった。

もう一度、名前を叫ぶ。
レギュラス、レギュラス、レギュラス、
狂ったように呼び続けた。

足に亡者の手が近づく。

「邪魔…っ、ルーモス・マキシマ!」

瞬間、回りがルーモスの明かりとは比べものにならないくらい明るく、湖が照らされる。
亡者を退け私はまだ、そこに立つ。
スカートは重く、セーターも同様に。辺に投げ捨てられたローブもまた、濡れているのだろう。

「レギュラス、出てきて、お願い…!」

私は明るくなったそこに目を懲らす。

きっと、大丈夫。
レギュラスがここにいる。
胸が熱くなる、だから、わかる。
私は、レギュラスが好きだ。
レギュラスが好きだから同じ組分け帽子にスリザリンに入れてほしい、と懇願したことも、まるで昨日のように覚えている。
図書室で一緒に話しながら課題をやったことも、一緒にお菓子を食べたことも、全て。

レギュラスが存在しなかったようになるのは本当に、嫌だった。
だから、この世界にいたという証を、私は遺したいと、考えた、のだ。
それが私のエゴで、レギュラスが望んでいなくても、構わない。

「レギュ、ラス、」
くちびるが震えた。
さむい、さむくて仕方がない。
「…レギュラス、」

涙がこぼれて、ひとつだけ落ちた。

―なまえ

「…!」

先程呼ばれた名前より、優しく、優しく呼ばれた。
別の涙がこぼれる。

―泣かないでください、なまえ

私は頭を左右に振った。

―僕は、もうすぐ、消える
―だから、僕は一番大事なものを持って来たんです
―でも、貴方に忘れられたくない…だから、僕の形見として、持っていて、く、ださ…

段々と掠れゆく声に、私はだらしなく涙を流しながら頷く。
瞬間、固くむすんであった右の手が、熱くなる。見ると、指の隙間からこぼれる光。手の平をあけると、

「ゆび、わ…」

黒い石、私と彼の共通の色の黒い、石がはめこまれた、小さなリング。

―本当は、貴方にあげるつもりだった、それを今渡すなんて、と思いましたが

うん、と、頷く。

―やはり、貴方に持ってもらいたくて…僕を、忘れてほしくなくて

うん、うん、涙でぐしゃぐしゃになる。
それでも涙は止まらない。

―ああ…もう、時間がありませんね

れぎゅ、と力無く私の唇が言葉を紡ぐ。

―これで、最後です。ぼくのことはわすれないでください、でも、わすれて。しあわせに、なってください、ね

瞬間、冷たい唇のようなものが、私の額を霞め、それは風のように、すぐに消えた。







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すごく長い。そしてオチがない。お付き合いありがとうございました…!
友達に内容を言ったらなぜその場面チョイスって言われてしまいました。でもレギュラス愛してます。
女の子が骨を持ち帰るのは絵的になんだか嫌だったので、指輪に。長編にもこの指輪を出します。



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