青エク
□2.5
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『遅いですよ、梓さん』
「だって面倒なんですもーん」
女子寮、ベランダ。
私は電話による定時報告をしていた。
「…燐はどうでしたか」
じゅるりと牛乳を飲んでいる音と私の声色は、なんだか空気的に矛盾していたと思う。
『大変ユニークですねぇ、と奥村先生にも言ったんですがお聞きにならなかったんですか?』
「ええ、まあ。あの後すぐ燐が来たんで話なんてできませんでしたし」
『まだ不安定で感情に振り回されてます、と』
「感情に振り回されてるのはいつものことですけどねぇ」
『やはりそうですか…コントロールできるようになる可能性は?』
「ない、とは言えませんが。時間がかかると思います」
『…ああ、あと貴方から見て今日の授業はどうでしたか?』
がしがしと頭を書いて一。
「えーと、ですね」
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「なんで俺に言わねーんだ!」
燐がつっかかりに行ってしまい、雪が手を滑らせ血の試験官を落としてしまった。
そうなったらどうなるか――、
小鬼が血の臭いに反応し、狂暴化する。
1/10ですら数匹おびき出せるというのに、原液が落ちた場合、
大量の小鬼が、出現する。
バガッ、天井に机に、小鬼が現れる。下級〜中級に区分される悪魔なら『見えて』さえいれば訓練生でさえ、多少の抵抗と逃げる事は可能だ。
どちらかといえばいい訓練になるだろう。
「あ、悪魔!」
「え、どこ!?」
「そこ!」
だが生憎、私たちのクラスで魔障を受けていない人が多すぎる。
私は小さく舌打ちをし、足につけてあるポーチの中からお札を出し構え、投げつけるとボッと白い炎が悪魔にこびりつき悪魔ごと消える。
「雪!」
「わかってる、教室の外に避難して!」
一通り早口に現状を言う。
小鬼だからザコで、私がいなくても雪が大丈夫。でも、
「雪、私も…っ」
「君も、外で待機だ」
バレたらいけないから、ね
耳元で小声で言われたそれはあやすような口ぶりに唇を噛んでしまう。
そんな私を見て雪は私の頭を一瞬撫で、
「奥村くんも早く…」
バンッ
燐の足により、開かれていた扉はしまってしまった。
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「…まあ私はここまでしか知りません」
「…ええ、まあ、はい」
「わかりました、…きちんと監視しますから」
「はいはい、わかりました、では」
…はあ
溜息をついて、携帯をブチ切った。
ベランダの手すりにもたれる。
燐を監視、なんて。どれだけ嫌な単語だろう。でも、それでも
「私の手で二人を守れるなら安いもんよねー…」
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