ぬら孫 犬玉

□ゼロ
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犬神が物欲しそうな目で
こっちを見てくる

「なあ…た、たまず」
「嫌だ」

犬神が言い終わらない内に返す

「なんぜよ!まだ何にも言ってないきに!!」

犬神がギャーギャー騒ぐ
煩い

顔を見れば分かる
馬鹿犬は本当に顔に出やすい

「なに、相手して欲しい訳?」

ワザとらしく犬神のベルトに
ゆっくり手を触れた

「…違う」

犬神はそう呟くと
ベルトに伸ばしたボクの手を
そうっと掴んだ

そのまま犬神の方へ引っ張られる

一瞬何が起きたのか
分からなかった

湿った感覚
他人の温度
唇の違和感

ボクと犬神の距離は
ゼロになっていた

いつもだらしなく垂らしていた舌は
珍しく仕舞ったらしい
唇の感覚がした




こんなに優しいキスは
これきりだと思った



*


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