それでも彼女は愛した
□喧嘩上等
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「アンタもあの女の妹ってことは、狩谷先輩に手ェ出すわけ?」
「いい加減にしろよ!やっと先輩、アイツがいなくなって安心してんだぞ!?」
先生が教室を去って、間もなく。いや本当に間がなかった。
すぐにバッと私の周りに集まってきた男女生徒たちが、口々に姉を罵り、私にも罵声を浴びせた。
私はそれをとりあえず黙って聞き入れ、ひたすら拳を強く握る。
手のひらに爪が食い込んで地味に痛いが、その痛みに集中していた。
やがてチャイムが鳴り、何人かは舌打ちをして自分の席に着いた。
ふと視線を感じて隣を見れば、越前がじっとこちらを見ていた。
『……どうした隣人』
「っ……別に………、」
そう言って越前はそっぽを向いたけど、私は黙って越前を見つめていた。
―――私が越前を見たときの、越前の何かに耐える顔が、授業中もずっと私の頭にちらついていた。
よほど暇なのか、授業が終わるたびに私の元へみんな寄ってきた。
「彼氏いるー?」
「どこから来たの?」
「アドレス交換しよぉー」
なんて、ありきたりな言葉は一切ない。
「お前どっか行けよ!」
「狩谷先輩に何もすんなよ!?」
「あんたの姉ちゃん最悪!!」
ざっけんな。
、