剣風帖

□White Valentine's Day
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 2月14日。

学校からの帰り道、京一は龍麻の隣で憮然とした顔を並べていた。


「……。なあ、ひーちゃん。チョコ――」

「嫌だ。俺がそんなことするわけないだろ。誰かにやる分があるなら自分で食べるし。」

「――…だよな。」


龍麻は無類の甘い物好きで、その上超がつくほどの頑固者である。
その龍麻が、いくら恋人の為とは言え、バレンタインチョコを買うなど有り得ないだろうとわかってはいたが、とどめを刺すようにそう言われてしまってはこれ以上粘ることもできず、京一はさすがに諦めた様子でトボトボと先を歩き始めた。
そして、何か鞄の中を探り出す。


「…?どうかしたのか、京一?」

訝しげに尋ねる龍麻に、京一はやっと取り出した小さな紙袋を差し出した。


「ひーちゃんにやるよ。」

「……って、おまえコレ―――」


差し出されたのは、どこからどう見てもバレンタイン用のチョコだ。
龍麻はキョトンとした顔でそれを凝視し、当の京一もいたたまれないといったように視線を逸らした。



 
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