気まぐれモビーの航海日誌

□〇月×日一人旅
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モビーディックは危機に瀕していた。


「消火ー!!!」
「海水でいいからぶっかけろー!」
「燃え広がりだけ防げー!」


海水を汲み上げる太いホースや、何本ものバケツリレーが走る。
その先を追えば1つの部屋に集まりその部屋は蒸気が立ち込めて視界を隠す。


「まいったねぃ…」


マルコは頭をかいた。
火事の知らせがひっきりなしに入る。
船と言うものは水が染み込まないようにタールがたっぷりと塗られている。
タールは油である。
一度火がつけばその勢いは激しい。

その原因は。


「エースの風邪はまだ収まらねぇのかよい」


エースの風邪による熱が原因だった。
たちが悪いのが、薬を飲ませようとしてもその前に燃え尽きる。
いや、まず近づけない。

マルコは眠れていない頭を一度振り歩く。
エースの部屋はヴァレリの部屋の近くにあり、万が一を考えて避難させるためだ。


「ヴァレリ、入るぞ」


ノックと同時に中に入れば自分を包み込むヴァレリの香り。
優しい匂いだとマルコは感じる。


「ヴァレリ?」


しかし中に思い人はいない。
マルコは怪しげに中に進むと見渡した。
しかしやはりヴァレリはいない。
机にもソファーにもベッドにもその影はない。

いつぞやの木は相変わらす青々とした枝葉を広げているが。



ふと机に紙切れがのっていることに気付きマルコは更に足をすすめた。
机の前まで行き手に取る。


「エースの薬の作り方を聞きに冥王のとこまで行ってきます。ヴァレリ」



マルコは青筋を浮かべ紙切れを握り潰した。
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