大江戸監察事件簿
□大江戸監察事件簿41
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どうも万事屋銀ちゃんこと坂田銀時でーす。今日はパチンコで軽く勝ったんで、祝い酒と称して馴染みの居酒屋に来ていまーす。
手ごろな値段でボリュームも、味も満足できるこの居酒屋はいつもと変わらず結構なにぎわいだ。俺はカウンター席について、見知った顔と取り留めもない話をしならが熱燗を呑んでいた。
「そう言えば銀さん」
「あ?」
「拝み屋って知ってるか?」
隣に座る大工屋の親父が方に手をかけて来る。
「拝み屋だあ?」
「そうそう、最近ちょっと流行ってんだよ」
流行っているわりに聞いたことのない響きに俺は耳をほじる。てか酒くせーよ。あんま顔近づけんな。
「これだよこれ」
親父が俺の目の前に何かをぶら下げる。
「お守り?」
紫色の小包はよく神社だとか寺だとかで配っているようなありふれたお守りだった。ただしそこに何とか祈願なんて言う文字はなく、本当に無地のお守りだった。
「俺もやっと手に入れたんだよ。拝み屋ってやつにちょいとお布施払って拝むんだ。そうすっとこいつをもらえる。これに毎日お祈りして肌身離さず持ってっと、願いがかなうってやつだ」
俺は空になったお猪口に徳利から酒をそそぐ。あ、こっちも空かよ。
「ぼったくりじゃねぇの?それ」
「それがよ。お布施はほんの気持ち程度ってんだ。見た目からしてもありゃあ大層徳の高ぇお方だ」
「ほーん」
「話は最後まで聞けって!」
俺が興味なく、店を出ようとしている空気を察したのか、親父はがっしりとそのたくましい腕で俺の頭を引き寄せた。
「これのお蔭でよう、ついに馴染みになったんだ」
こそこそと耳に手を当てられて打ち明けられた内容に、さすがの俺もちょっとだけ興味をひかれた。馴染みになったとはつまり狙っていた花魁に認められたということだ。
「マジかよ。くれ」
お守りに手を伸ばしたが親父がお守りを勢いよく懐にしまったため、俺の手は宙を切ることとなった。
「拝み屋にでも頼むんだな銀さん」
だから、どこに行けばいいんだよ。
俺はこの話はもう仕舞いだと席を立ち勘定を済ませた。
「ウンパッタソワカ」
暖簾をくぐる俺に届いた声。振り向くと親父がカウンターの上に出したお守りに熱心に手を合わせていた。
「気持ち悪ィ…」
居酒屋での光景にふさわしくないそれは、俺の酒で濁った頭を変に冴えさせた。
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