大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿(22)
3ページ/5ページ

部屋に通され人形と二人になる。


「土方様、情けだとおっしゃるのなら後生でありんす。どうか何も見なかったと…」
「やめろ」
「土方様」
「やめろ人形!」


勢いで人形に掴みかかり押し倒した。
懐かしい黒髪が敷かれた布に散らばる。


「お前は新選組の監察だろうが!」
「失明した体でどうしろと!」


着流しの衿元を掴み引き寄せられる。


「私はもう身を売った!帰って!帰ってよ!帰って下さい、副長…」


衿元からするりと手をはずされ人形は己の瞳を覆った。


「俺が…俺が身請けする。監察方に戻らなくてもいい。けれど組にはお前が必要だ」


これ以上ないほど優しく囁く。


「だから帰ってこい人形」









次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ