大江戸監察事件簿
□大江戸監察事件簿(22)
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部屋に通され人形と二人になる。
「土方様、情けだとおっしゃるのなら後生でありんす。どうか何も見なかったと…」
「やめろ」
「土方様」
「やめろ人形!」
勢いで人形に掴みかかり押し倒した。
懐かしい黒髪が敷かれた布に散らばる。
「お前は新選組の監察だろうが!」
「失明した体でどうしろと!」
着流しの衿元を掴み引き寄せられる。
「私はもう身を売った!帰って!帰ってよ!帰って下さい、副長…」
衿元からするりと手をはずされ人形は己の瞳を覆った。
「俺が…俺が身請けする。監察方に戻らなくてもいい。けれど組にはお前が必要だ」
これ以上ないほど優しく囁く。
「だから帰ってこい人形」
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