大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿(18)
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檻に入れられた局長を見送り、船内へ。
人形には不慮の事故でと説明しておいたがそんなので納得する人形ではない。
ちょうど人形の隣の座席が局長だったため、人形はずっとその空席に張り付いている。

そう、離陸してからもずっと。


「うっうっう…」
「人形、他のお客さんの迷惑になるから静かにして!」
「うっうっう…」


なんとか通路を挟んだ横の人形を落ち着かせようとするが人形は泣き止まない。
それがまた俗に言う女の啜り泣きの声。
船内が若干温度下がっているのは気のせいだと思いたい。


「ったく、さっきからうるせぇんだよ!てめぇはお菊さんですかコノヤロー」


人形の後ろの座席から声が上がる。
あれ?この声ってもしかして…


「万事屋の旦那!?」
「あれ?ジミーじゃないの」


やっぱり。
俺は知らず知らずのうちに頭を抱えてしまった。
すでにこの旅行の先行きに不安を覚えたからだ。


「ってことはもしかしてこの泣き声」


旦那はシートベルトを外して立ち上がり、前の座席を覗く。


「人形!」


旦那は人形の隣が空席なのを目ざとく見つけると人形をそちらに押しやり人形がいた座席に無理矢理座りこんだ。

ってか旦那、今人形のこと呼び捨てに?


「どうしたの人形ー。ほら銀さんの胸貸してあげるからもたれちゃいなよ」
「うっうっう…局長ぉ…」
「そら人形はゴリラが好きかもしんねぇけどさぁ、たまには昔の男で肩の力抜いてもいいんじゃね?」
「うう…銀さん」
「そうそう、ほらおいで人形」


おとなしく旦那の胸に収まった人形。
ちょっと待てェェエ!今なんかサラッとすごいこと言ってなかった!?


ガッ


俺が心の中で盛大に突っ込んでいると人形が旦那の顔をわしづかみにした。


「誰が呼び捨てを許したクソパー。皿投げんぞ」
「すみません、調子こきました。あとお菊さんって言ってごめんなさい」


そこォオオ!?
昔の男はスルーなの!?
え?え?どういうこと?


「銀ちゃあああん、機内食銀ちゃんの分食っていいアルか?」
「神楽ちゃん静かに!」
「ダメに決まってんだろ!あ、銀さんダメって言ったよね!何フツーに食ってんのお前!?」
「よぅチャイナ来てたんですかィ。機内食ごときにたかるとは、流石ですぜィ」
「サド丸お前こそドリンクおかわりしすぎネ!」
「神楽ちゃん静かに!」
「………タバコ……タバコ………」


ああ、地球に戻ってくれないかなこの宇宙船。










END
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