大江戸監察事件簿
□大江戸監察事件簿(11)
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夜中、寝苦しさで目が覚めた俺は布団の上で転がった。
せっかく仕事投げ出して寝たっつーのにまったく寝れやしねぇ。
頭にずっと人形の顔が張り付いてやがる。
眉をよせて、何かを耐えるような顔。
目ん玉こぼれ落ちるんじゃねぇかって。
あんな顔、仕事どころか普段は一歳みせないくせに、あんな格好してやがる時に限って卑怯だ。
よく、似合っていた。
長い黒髪も睫毛も、白い肌も、赤い唇も、着物があいつの綺麗な所全部引き立てて、夕日のような橙の帯があいつと着物を繋げて
凄く、綺麗だったんだ。
俺があんな見栄はらずに素直に褒めてたらどんな顔してただろうか。
きっとあの場マヨがなかったとしてもあいつは俺の言葉で喜ばなかった。
どうして飾らず、素直に「似合ってる」の一言が言えなかったんだ。
そしたら、そう言えてたらあいつはきっと…。
俺は本当に最低なクソ方だよ、全く。
今日は寝れやしねぇ。
カーン…カーン…
なんだ?
カーン…カーン…
定期的に聞こえる不可思議な音に、俺は布団からはい出てそっと障子を開けた。
すると中庭の松の木の方で、何か灯がちらちらと見える。
「マジ死ねクソ方ァァァア!!!」
死装束の人形だった。
カーンッカーンッ
「マジあいつぶっ殺す!明日あいつフィルター逆にしてタバコ吸え!」
ちっさ!呪いちっさ!!!
「よかった、いつもの人形だ」
俺はようやく安堵の眠りについた。
翌日、あえてタバコを逆さまにして吸ったのは…まぁ俺からのごめんなさいだ。
END