大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿41
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あれからしばらく、俺は久しぶりのパフェにありつこうとファミレスに来ていた。


「いちごパフェ1つねー」
「はい!いちごパフェですね!」


元気な声が降り注ぎ、何となしにそのバイト見るとこりゃまあ驚いた。いつも怒られてばっかりでびくびくと接客をしていた子が天真爛漫な笑みを浮かべている。何度か俺もフォローをしてやった子だった。いや、下心じゃないからね。親切心だからね。


「バイトにはなれたか?」
「はい!最近自信がついてきたんですよ!」
「そりゃ良いこった」


注文をとって立ち去るバイトを見送り、俺は運ばれてきた水を一口飲んだ。




「ウンパッタソワカ」



聞こえた言葉に勢いよく振り向く。
しかし彼女は何事もなかったように接客を続けていた。




何とも言えない気持ちでいちごパフェを食べきり、店を出る。せっかくの週に一回の楽しみが楽しみ切れなかった。胸の中に何か嫌な、何か大切なことを忘れているような、そんな気持ち悪さが渦を巻いている。


「げっ」


その気持ち悪さを助長するかのように黒い集団が視界に入る。しかもよりによって先導が土方クンかよ。
恐らくパトロールの最中だろうが、俺の方から道を変えるのも癪に障るため、そのまま突き進んだ。


「よー税金ドロボー」
「チッ万事屋か」


俺の姿を視界にとらえると途端に皺を寄せて吐き捨てる。俺も同じ気持ちだっつーの。


「何?みんなの大切なお金使ってお散歩ですか?」
「うるせェ。今テメェにかまってる暇はねェんだよ」
「何?ゴリラの回収?」


土方クンは俺を睨み付けたが、何かを考えたように眉間の皺を一度ゆるめた。


「最近吉原や賭博場あたり…つまりそっち界隈で妙な事件が連発している。これ以上詳しくは言えねェがな。そっちにも顔が広いお前のことだ。何か知らねェか」


土方クンの言葉になぜか先日の居酒屋での会話が思い出された。共通点は「吉原」ということだけだが、なぜか俺の勘は二つを結びつけていた。


「直接関係あるかどうかはわからねぇが、最近拝み屋って言う妙な信仰がはやってやがる」
「拝み屋?」


俺は親父に聞いたことをかいつまんで説明した。


「宗教がらみとなると面倒だな」
「繋がりはわからねぇがよ。一応報告ってことで」
「いや、お前の言う通りキナ臭ェ。そっちも調べてみる」


土方クンはジミーを呼びつけると何か指示を出した。一気に慌ただしくなった現場に、俺はもう用済みらしいので、立ち去ることとした。

それにしても、この町は話題に事欠かないねぇ。






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