大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿39
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「じゃあトリは俺だな。俺は土方クンみたいな小賢しい手は使わず正々堂々と行くさ」


銀さんは無駄にカッコよく微笑むと、もはや見慣れたコーナーに歩いていく。なんか凄い堂々としてるんですけど。ムカつくぐらい堂々としているんですけど。

銀さんはまずは普通に小箱を一つとる。すると沖田さんと同じようにその場にしゃがみ込んだ。


「ま、まさか万事屋…っ!」
「旦那!それだけはやっちゃいけねェ!」


え、何。何が起きているんですか。というか土方さんも沖田さんも、何そんなに慌ててるんですか。
立ち上がってレジに向かう銀さんの手には小箱と、歪な形をした赤い筒。

あ、あれは…っ!
男性おひとり様用のっ!!!


「ゴムとオ○ホを一緒に買うことによって『彼女なんかいない自分はこれから何回もこれを使いまわして楽しみます』感を出してらァ。さすがですぜィ旦那…」
「万事屋…まさか男としての矜持までかなぐり捨てて挑んできやがるとは……くっ」


何で見直してんの沖田さん!何で泣いてんの土方さん!アンタが一番情緒わけわかんないわ!それで銀さん、何勝ち誇った顔で帰って来てるんですか!むしろ男性として一番惨めな結果ですから!


「完敗だ万事屋」
「いやいや良い勝負だったよ土方クン」


お互いやりきった顔で握手するなァァアァ!普段アンタらめちゃくちゃ仲悪いでしょ!


「だが万事屋。うちにはまだ最終兵器が残ってるぜ」


その土方さんの一言に全員が人形さんを見る。人形さんはいくつかお灸を選んだのか、手に箱を抱えてこちらに来た。


「え?本当に私も行くんですか?」


人形さんが目を丸くしている。そりゃびっくりするよ。というか無理矢理女性にゴム買わせるなんて、セクハラ以外の何物でもないよ。


「人形、日ごろの研究成果を見せる時ですぜィ」
「遠慮はいらねェ。思う存分やってこい」
「人形ほどほどにねー」


それを聞くと人形さんは手に持っていたお灸の箱を山崎さんに押し付けた。そして髪の毛を片手で掻き上げる。
な、なんか一瞬にして雰囲気が変わったんですけど。


「まかせて」


歩き方から、変わった。体のラインの美しさが強調される。棚の前に立ち、前かがみになって吟味を始めると形の良い、そ、その、あの、お尻がですね、目立ってウワアアアア!人差し指を唇に当てながら悩む姿はこ、小悪魔!
やがて箱を一つ手に取るとレジに向かう。
レジは先ほどまでいた年配の女性ではなく、バイトらしき派手な髪色の男が立っていた。


「あれ?お姉さんこんなん買っちゃうんスか?」


ニヤニヤしながらバイトは人形さんに話しかける。最低だアイツ!


「彼氏さんとこの後ってやつっスか?俺も混ぜてくださいよー」


度を越したセクハラ発言に間にわって入ろうかとした時だった。人形さんは会計をすませた後、小箱をその細い指で手に取った。
そしてそれを口元にもっていき…

ちゅっ

「またね。バイトくん」


っっっハアアアアア割れたー!!!僕の眼鏡が割れたー!!!何あれ何なのあれ!またねって男に流し目をしつつゴムの箱にキスって、もはや歩く18禁ですよ!ほらバイト前かがみに崩れ落ちてるし!


「あー人形だからやりすぎるなって言ったのに」


山崎さん何でアンタ普通なんですか!これが大人!?年長者の余裕ってやつ!?
あ!人形さんお店から出て行った。


「おい山崎。お前はこのまま屯所戻れ。あと近藤さんに巡回で帰るの遅れるっつっとけ」
「幸いにもゴムはたんまりありまさァ」
「ねえちょっと最初は銀さんだからね!優勝者は銀さんだからね!優勝特典もらうからね!」
「うるせェお前はお一人様用があるだろ!あとここら辺で一番近いホテル教えろ!」
「いやもう屯所戻って取調室はどうですかィ」
「え、沖田君それサイコー」


ギャイギャイ走って人形さんを追いかけるエロバカトリオ。残された僕と山崎さん。


「山崎さん」
「何だい新八君」
「山崎さんって大人ですね」
「はは。まあ人形のあれくらいの挑発、俺からしたら日常茶飯事だからね」
「僕山崎さんのこと心から尊敬します」


真選組で一番凄いのは山崎さん。
僕の中で新たな認識が生まれた日だった。

というか、買ったこれどうしよう。





END
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