大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿36
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待ちに待った火曜日。まさにおやつ時に差し掛かろうとする時間に待ち合わせ場所にたどり着く。
そこには着物に羽織、そして赤いマフラーを巻いた人形ちゃんが、時間をつぶすためか、携帯をいじりながら立っていた。
周りをナンパであろう男達が囲み、必死に声をかけているが、一切の存在をスルーされていて笑えた。


「ちょっとお兄さん達、それ俺のツレなのよ。どいてくんない?」


声をかけると男達、そして愛しの人形ちゃんが顔をあげる。うわ、鼻の頭ちょっと赤くなってる。かーわーうぃーいー。


「遅い」
「わりぃわりぃ」


固まってる男達の中に体ごと割り込み、人形ちゃんの肩を抱いて歩きだした。何か銀さん格好良くない?あと自分で言っておいてだけど俺のツレって響きもたまんない。でも折角なら俺の女って言いたい。

しばらくその状態で歩くが、特に何も言われなかったのでそのままカフェへと到着した。


「いらっしゃいませ〜」


若いバイトの声が響く店内に入る。いかにも女子が好きそうなメルヘンチックな装飾が施されている。
あーもう甘い匂い!最高!


「只今カップル限定イベントでして、何かカップルと証明していただかないと入店できないんですが」


何ィィィ!?
てことはあれですか。手を繋いじゃったりとか?いやいや何ならハグとかキスとか?

にやけ顔で人形ちゃんの方を見るが、何のリアクションもない。

いやいやいやいや、よく考えろ。ここでの選択肢を間違えると後がない。ボコされて終わる。何なら下手するとしょっぴかれる。しかし折角のチャンスだ。この好機を生かしつつ嫌われないギリギリを攻めろ銀時!手か!ハグか!でこちゅーか!ほっぺちゅーか!はたまたノーマルか!それともディープかァァァ!!!


「あの」


「ごめんなさい、本当はカップルではないんです」


何言ってんの人形ちゃんんんん!!!
思わず人形ちゃんを見ると、人形ちゃんは口元を手を当て、視線を落とし、頬を朱色に染めている。
え?恋愛シミュレーションゲームのスチル絵?


「でも、そうなって欲しいなって……」


か細くい消え入りそうな声で呟くと人形ちゃんはそのまま俯き、マフラーに顔を埋めた。
きゅうううううんと、それを見た全員の心臓から何か聞こえる気がする。
え?なに?これ国で保護しなくていいの?保護対象だよこの可愛さ。


「そういうことでしたら大丈夫ですよ!こちらにどうぞー」


がんばってくださいね!
何てテーブルだけでなく店員の励ましまで得ることとなった。


「はい楽勝ー。さー食べよ食べよー」


しれっといつもの顔で店内を進む人形ちゃん。


「あの、さ。お前ああいう演技するタイプだったっけ?」
「最近使えるモノは使った方がいいことを学んだ」


ちくしょおおおお!
でもちゃんと脳内メモリーに刻んだよコノヤロー!!!




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