大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿35
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次の朝。
隊士達は朝食をとろうと食堂につめかけていた。
もちろん俺と人形も。


「「おはようございまーす」」


先に来ていた隊士達に声をかける。


「おう山崎人形。おはよう」
「早くしねぇとなくなるぞ」
「ラッキー今日は豚汁じゃねぇか」


振り向いた。


「「「ぶっはははははは!!!」」」


三人の目線が俺たちの顔面に集まり、爆発したかのような笑い声が響いた。
その声に何事かと他の隊士達の視線も集まる。
そして食堂中の大爆笑。


「ぶっ!お前ら、随分とイイ所に、カットに、行ったんだな!ぶは!」
「おそろってやつか?ぶ、仲良いな!ぷぷ」
「何芝刈?芝刈っちゃった?」


ほぼ前髪をなくした人形に、完全に前髪をなくした俺。何なら深追いして剃りこみ付きだ。
もう何を言われてもかまわない。
トレーをとり、朝食を女中から受け取ってテーブルに座る。人形も隣に座るが、他の席の隊士達が俺たちをチラチラと見て吹き出す。


「副長何か?」


そのうちの一人に朝から犬のエサを食ってる副長が含まれていて、人形は冷たい言葉を投げ掛けた。


「いや、ぶふ、何でも、ねェ」


もはや無の境地に達した俺たちは朝ごはんを食べるが、その普通さにまた笑い声が響く。


「お!?何だか今日は朝から賑わしいなぁ!」


そこに現れた局長。人形は咄嗟におでこを隠すが、もはや隠した手のひらの上に前髪があるため意味がない。


「なんだ山崎人形!イメチェンか!?」


目ざとく俺たちを見つけた局長が近寄って来て上機嫌に俺たちの肩をたたいた。


「よく似合ってるぞ!」
「「「ぶははははは!」」」


全く悪気はない局長の言葉に俺すらも笑ってしまった。


ゴンッ


机の角に自分のデコを沈めた人形の複雑な心境を想像して、俺たちはさらに腹をよじった。


その後適度な長さになるまで、人形は頭巾まで完璧にそろえた男物の忍装束を着て、人目につくところではそれを一切脱ぐことはなかった。




END
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