大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿30
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「悪ィ近藤さん。酌にも行かずに」
「よせトシ。今日は無礼講だ」
「近藤さん、注ぎまさァ」
「おお悪いな総悟!」


いつも上座でお酌をされてばかりいる近藤さんだが、今日は自分が隊士たちを回ると決めたようだ。


「局長!私に注がせてください!」
「お!すまんな人形。ん?人形はビールじゃなくてワインか?」


人形が近藤さんにビールを注ぎそれを近藤さんが飲み干す。そして次に近藤さんがワインボトルを人形に向けた。


「ワインは後から一気に来るからな。ちょこっとだけにしておこう」


そういうと本当に少しだけ人形のグラスにワインを注いだ。今ばかりは無駄に常識を発揮している近藤さんを恨みまさァ。


「へへ…局長の注いだワイン…」


人形はグラスを目の前にもってきて怪しく笑うと一気にそれを呑みほした。


「お、おい人形!あんまり一気に呑むと」
「局長のワインならえんやこらー!もっとください!!!」
「人形は強いんだな!よし!もっといくか!」
「もっとたくさん欲しいです!局長のワイン!ありがたくいただきまーす!!!」
「いいぞ人形ー!」
「呑め呑めー!」
「脱げ脱げー!」
「やめて人形ー!」


まるまるグラス一杯の赤ワインを飲み干す人形に周りからも野次が上がる。遠くから山崎の制止する声が聞こえたが気のせいにしておこう。


「ぷはぁっ!うまい!!!」
「おお!やるな人形!」


すでに立ち上がってワインを一気飲みした人形に周りの隊士たちは拍手喝采。
そして俺と土方さんはというと…。


パァン!


人形の後ろで目も合わせず腕だけ伸ばし力強いハイタッチをした。




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