大江戸監察事件簿

□大江戸監察事件簿29
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「えーまずは会に先立ちましてー局長と副長からそれぞれお心付けいただいてまーす」


司会者がそう言いながら金一封と書かれた袋を2つ掲げた。
それに合わせて隊員たちが局長と副長にそれぞれお礼を言う。
いつもの流れだが、昔自分が幹事をやたときにその心付けの金額がかなり多かったことに驚いた。

こういうことは抜かりないよな、この人たちって。


「それでは只今よりスキー研修お疲れ様会をはじめまーす。本日の幹事は二番隊が務めさせていただきまーす。遠慮せず注文してね」


ウィンクと投げキキッスを決めた司会者にあちらこちらから悲鳴とからかいの声があがる。
何気にノリいいな二番隊。


「それでは局長!ご挨拶をお願いします!」


隣で局長が立ち上がった。
いつもとは違う入口付近のその姿を見て、隊員たちも姿勢を正す。
まるで毎日の朝礼のようだ。


「隊士諸君!日々江戸は何かしらおこる。我々が大なり小なり怪我をするのも日常茶飯事だ」

「だがしかし!俺は最近パトロールをしていて気づいたことがある!」

「それは、市井の人々には笑顔が絶えないことだ。怪我をするのはいくら鍛えようとも痛い!いわれなき悪評で傷つくこともある」

「しかし、その先に人々の笑顔があることは間違いのない事実だ」

「今日は大いに呑んで、騒いで、傷の嘗め合いといこうじゃないか」

「無礼講だ!!!」


その瞬間、会場が湧き上がる。
突入直前の高揚感にも似た何かがつつむ。
ちょっと俺うるっときちゃったよ。
というか、隊士何人も泣いてるし。


「ぐす…えーじゃあ局長の最高の挨拶のあとに乾杯でーす…うぇ…副長お願いしま―す」
「できるか!!!」


うわぁ…この後の副長かわいそう。
司会者の言葉に、旅館の人たちと三番隊が一斉にビールを注ぎに回る。
ぷぷ。沖田隊長オレンジジュースだ。

役は役なだけに、しぶしぶ副長はグラスをもって立ち上がる。
それに伴って全員が同じように立ち上がった。


「あーなんだ。普段色々と言ってっけど、お前らには感謝してる。今日は楽しんでくれ」


普段そんなこと一切言わない副長の思いがけない一言に、またちょっと涙腺がゆるみかけた。
もう、こういうとこちゃんとしめるからさぁ!この人たち!


「あと10時以降は7階の角部屋付近には立ち入らないように」


前言撤回ー!!!
それってあれだろ!絶対沖田隊長の部屋だろ!


「まぁ近藤さんの言う通りだ。呑んで、騒いで、日頃の鬱憤はらそうや」

「乾杯!!!」


「「「「「乾杯ー!!!」」」」」




ついに始まってしまった恐怖の宴会。
この先どうなることやら。そして俺は無事ほにゃほにゃ人形を守りきることはできるのか。


「副長、かんぱーい!」
「ほらよ」
「沖田隊長、かんぱーい!」
「かんぱーい」


無理な気がする…。


END
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